【MLB】大谷翔平が近づく「170得点」の歴史的価値 ドジャース一塁コーチが語る「1番打者としての凄み「メジャーの投手たちは、本当に怖がっている」 (4ページ目)
【「最初は正直、ちょっと戸惑いました(笑)。翔平は背が高いので」】
――ベースランニングのうまさも年々向上している印象がありますが、その点についてはどう見ていますか?
「実は昨年の前半までは、走塁面でいくつかの課題が見られました。たとえば外野にフライが上がった際、タッチアップの判断が遅れたり、塁に戻るか進むかの判断が中途半端だったりする場面が何度かあったんです。でも今年は、その点が明らかに改善されていて、外野フライが上がればすぐにタッチアップの準備をするなど、正しい判断とプレーができるようになっています。
翔平は非常に意欲的で、自分から積極的に学ぼうとする姿勢を持っている選手です。コーチングを受け入れることに前向きで、『なぜこのプレーが重要なのか』『なぜこの判断が求められるのか』といった背景まで理解しようとする。そういう強い向上心を持っているからこそ、短期間でここまで走塁が改善されたのだと思います。
多くの選手は30歳を過ぎると盗塁を控えるようになり、走力を活かす場面が減っていきますが、翔平は違います。年齢に関係なく、今でも積極的に走る姿勢を持っており、そうした姿勢が彼の価値をさらに高めています」。
――昨年のワールドシリーズでは、スライディングによるケガもありました。そのあたりの対策はどうしていますか?
「スライディングの技術向上にも、彼は真剣に取り組んでいます。日々の練習のなかで、たとえばスライディング時に足や手を、ベースに確実に残して触れ続ける技術を磨いています。これができていないと、一瞬でもベースから離れた際にタッチアウトになるリスクがあるので、とても重要です。
また、相手のタッチを避けるために、ベースの外側から角度をつけてスライディングする技術も身につけました。さらに、ヘッドスライディングに関しても、体を低く保つことでタッチを避けやすくなるという利点があります。特に送球が高めにきたときは、野手がタッチしづらくなるんです。
とはいえ、ヘッドスライディングにはリスクもあります。肩やひじ、手首などの故障につながる恐れがあるので、無理をさせないよう注意を払っています。翔平自身も、そのリスクを理解したうえで、場面に応じて最適なスライディングを選択するようになっています」
――後半戦には投手としての復帰も予定されていますが、その場合、盗塁など走塁面に影響は出ると考えていますか?
「われわれとしても、その点はより慎重に対応していくつもりです。翔平が"走れるから走る"のではなく、『この場面で走る意味が本当にあるのか?』と、リスクとリターンをしっかりと計算したうえで判断していくことになります。
投手として復帰すれば、当然ながら体への総合的な負担はさらに大きくなりますからね。最も大切なのは、シーズンの最後まで健康な状態を維持することです。彼の身体を守ることは、チームにとっても非常に重要な使命だと考えています」
――話は変わりますが、一塁ベース上での"ヘッドバンプ・セレブレーション"にはもう慣れましたか?
「最初は正直、ちょっと戸惑いました(笑)。翔平は背が高いので、こちらがタイミングを合わせるのがなかなか難しくて。でも、今ではすっかり慣れましたよ。むしろ、楽しくやっています」
つづく
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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