検索

【MLB】大谷翔平が目指す二刀流でのワールドシリーズ出場 ベーブ・ルースを超える可能性はあるか?

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

慎重に投手・二刀流復帰の準備を進める大谷 photo by Getty Images慎重に投手・二刀流復帰の準備を進める大谷 photo by Getty Images

後編:ドジャース日本人3投手の現在地

ロサンゼルス・ドジャースに所属する3人の日本人投手――山本由伸はメジャートップクラスの活躍を見せ、佐々木朗希が故障者リスト入りするなど苦労するなか、極めて興味深いポジションにいるのが大谷翔平だ。

現在は打者としてエンジンがかかり始めチームの主砲として打撃面で圧倒的な存在感を放ちながら、2023年8月以来となるメジャーのマウンド復帰を目指し、投手としての貢献も視野に入れて調整を進めている。

もし、大谷が今季、二刀流としてチームをワールドシリーズ制覇へ導くことができれば、それは1918年のベーブ・ルース(ボストン・レッドソックス時代)以来、MLBの長い歴史のなかでわずかふたり目の快挙となる。

【超一流の打撃成績を残しながら投手復帰へ着実な過程】

 大谷翔平はDHとして今季もMVPを狙える好成績を残しており、本塁打17本はメジャー全30球団で単独トップ。51得点もリーグ最多で、盗塁もチーム最多の10個を記録している。まさにドジャース打線の牽引役だ。

 通常、これだけの貢献をしている選手に対し、シーズン中に新たな挑戦をさせることはない。負傷のリスクや、疲労による打撃への悪影響を考えれば、チームにとって大きな損失となる恐れがあるからだ。

 しかし大谷は、MLB史上でも極めて稀な存在であり、二刀流で2度MVPを受賞した唯一無二の選手だ。そして本人が、投手としての復帰に向けて全力で取り組んでいる。現在は毎週水曜日と土曜日にブルペン入りし、徐々に投球強度を上げている。

 5月17日の試合前には、術後最多となる50球のブルペン投球を行なった。実戦を想定し、25球投げたあとにインターバルを挟み、再び25球。セットポジションやクイックモーションからの投球も取り入れていた。

 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、大谷の調整について「投手コーチの話では、今回も非常によかったそうです。順調に前進できている」とコメント。一方で、打者を相手にした実戦形式の登板(ライブBP)の準備状況について問われると、「その段階にはまだ入っていません」と述べるにとどめた。現時点では、大谷の投手としての実戦復帰はオールスター後になると見られている。

 大谷は、投手としての調整について、4月の時点で次のように語っていた。「ブルペンは順調にきていると思います。ライブBPに入ったらペースが変わるので、そこは臨機応変に対応したいです」と話し、実戦形式の投球に向けた心構えを示していた。

 ライブBPを始める時期については、「投げる球種や球速にまだ制限がある段階なので、そこはドクターやチームのスタッフと相談して決めることになります。自分の感覚的にはすごくよい状態なので、そう遠くないうちに始めたいと個人的には思っています」と前向きな姿勢を見せていた。

 しかしながら、前述のとおりドジャース側は極めて慎重。ドジャースに制限をかけられているのかと問われた大谷は、「ドジャースの制限というよりは、ドジャースがチームドクターと話しながら決めていること。手術を担当してくれた医師の方が、2回目の手術ということもあり、慎重に進めたほうがいいという考えで、自分としてもそれに沿ってやっていきたいと思う」。

 ブルペンでの投球における「球種の制限」については、「今の段階で投げない方がいいとされている球種もあります。スイーパー系ですね。制限がかかって当然かと思います。今のところはファーストボール系の球種になりますが、その精度を高めていくことが、次の球種に移る際にスムーズな移行につながると思います」と説明した。

 直近の5月17日のブルペンでは、フォーシーム、ツーシーム、スプリット、カッターだけを投げている。

1 / 3

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

キーワード

このページのトップに戻る