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【MLB】大谷翔平が目指す二刀流でのワールドシリーズ出場 ベーブ・ルースを超える可能性はあるか? (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【ドジャース投手陣の台所事情は復帰時期に影響?】

 もっとも、今のドジャースの投手事情を見れば、そう悠長なことを言っていられない可能性もある。山本由伸はすばらしい活躍を見せているが、ほかの先発陣は不安要素が多い。

 昨オフに大型契約で獲得したブレーク・スネルは、わずか2試合に登板しただけで肩を痛めて故障者リスト(IL)入り。タイラー・グラスノーも5試合登板後に離脱している。

 37歳のクレイトン・カーショーは、5月17日に復帰登板を果たしたが、4回5失点と結果は振るわなかった。ケガを抱えていない先発陣も安定感を欠いている。ダスティン・メイは今季8試合に先発し、1勝4敗、防御率4.43。トニー・ゴンソリンも4試合で防御率4.05と、やや精彩を欠く。その影響で、ドジャースの先発投手による総イニング数はわずか215回1/3にとどまり、メジャー30球団中最下位タイという状況に陥っている。先発の消耗を補う形でブルペンへの負担が増し、そのブルペンも次第に打ち込まれ始めている。チーム全体の防御率は4.18で、MLB全体の21位と低迷している。

 こうした状況に、編成本部長のアンドリュー・フリードマンも頭を抱えている。5月18日の会見では、苦しい胸の内を明かした。

「オフシーズンには先発投手陣を万全に整えるために補強を行ない、このシーズン中に復帰すると見込んでいた選手も複数いた。それなのに、次々と故障者が出てしまっている。夜も眠れないほど『何ができるのか』と考え込んでしまうし、本当に歯がゆい。次から次へと現れる問題を、もぐら叩きのようにどう潰していくか――頭の中はそのことでいっぱいです」

 だからこそ、大谷について「10月の戦いを見据えている」と説明していたが、それまでに起用せざるを得なくなる可能性もある。

 そもそもトミー・ジョン手術から復帰する投手には、実戦で登板を重ねながら徐々に状態を上げていくという過程がある。昨年、ワールドシリーズでヒーローとなったウォーカー・ビューラー(現ボストン・レッドソックス)も、レギュラーシーズンでは16試合に先発しながら、防御率は5.38と苦しんだ。今年のドジャースは、8月に地区のライバルであるサンディエゴ・パドレスやアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの対戦が多く組まれており、9月には宿敵サンフランシスコ・ジャイアンツとの大一番も控えている。

 そうした重要な試合に登板しながら、本当にコンディションを上げていけるのか。そして、投手としての登板がDHとしての役割に支障をきたすことはないのか――懸念は尽きない。だが、それでもなお、大谷翔平ならば、そうした困難な状況の中で、新たな伝説を作ってくれるのではないか――そんな期待を抱かずにはいられない。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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