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【MLB】大谷翔平が近づく「170得点」の歴史的価値 ドジャース一塁コーチが語る「1番打者としての凄み「メジャーの投手たちは、本当に怖がっている」

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

104年ぶりの170得点台に向かっている大谷翔平 photo by Getty Images104年ぶりの170得点台に向かっている大谷翔平 photo by Getty Images

前編:大谷翔平、史上最高の1番打者への進化と二刀流復帰

大谷翔平が1番打者としての凄みを増している。本塁打などの長打に注目が集まりがちだが、「得点」でもベーブ・ルース以来、104年ぶりの170得点台ペースで数字を重ねている。

いったい大谷の凄さはどの部分にあるのか。今季からドジャース一塁ベースコーチを務めるクリス・ウッドワードに、歴史に残るリードオフマンとの比較、1番打者としての長所を語ってもらった。

【ルース以来104年ぶりの「170得点」台の可能性】

 大谷翔平は、ロサンゼルス・ドジャースが59試合を終えた時点で57試合に出場し、メジャートップの63得点(2位のアーロン・ジャッジ/ニューヨーク・ヤンキースに8点差)を記録しており、シーズン171得点ペースとなっている。20世紀以降、シーズン得点が170点を超えたのは、1921年にヤンキースのベーブ・ルースが記録した177得点の1度だけだ。160点台に到達したのも、1936年のルー・ゲーリッグ(ヤンキース/167点)、1931年のゲーリッグと1928年のルース(ともに163点)の3例しかない。

 野球において得点は、打点ほど高く評価されてこなかった。その理由は、得点がチームメイトの影響を強く受けるからだ。得点は「ホームに戻ってくる」ことで記録されるが、それは自らが本塁打を打つか、後続の打者がヒットや本塁打などで走者となった自身を返してくれるかどうかによるからだ。いくら出塁しても、後ろの打者が凡退すれば得点できない。つまり、個人の能力だけでは達成できないのが得点という記録である。そのため、打点のほうが「点を生み出した」という積極的な貢献として、歴史的に高く評価されてきた。

 しかし近年のセイバーメトリクス(統計学的な分析を元に選手の評価や戦略を考える分析手法)では、その打点すら「打順やチーム状況に依存する指標」と見なされ、評価の対象から外れつつある。それよりも、出塁率(OBP)、長打率(SLG)、OPS(OBP + SLG)といった、より個人の打撃能力を反映した指標が重視されている。

 とはいえ、もし大谷が今季、104年ぶりにシーズン170得点の大台に到達すれば、それは歴史的な快挙だと筆者は考える。二刀流の成功や「50本塁打・50盗塁」達成、3度のMVP受賞ほどのインパクトではないかもしれないが、1番打者として打線をけん引し、チームを優勝争いに導いた証だからだ。確かに、後ろの打者が走者を返してくれたおかげではあるが、大谷が塁に出て、相手投手や守備に常にプレッシャーをかけ続けた結果でもある。

 このテーマについて、ドジャースの一塁ベースコーチ、クリス・ウッドワードに話を聞いた。一塁コーチといえば、大谷とのヘッドバンプで話題になったクレイトン・マッカラー(現マイアミ・マーリンズ監督)が思い浮かぶが、今季からウッドワードがその役を務めている。現役時代には松井稼頭央、石井一久、イチローらとプレーし、コーチとしても岩隈久志や前田健太とともに働き、テキサス・レンジャーズ監督時代には有原航平をローテーション投手として起用した実績がある。

 筆者にとっても長年、何度も取材でお世話になってきた人物だ。

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著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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