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【MLB】大谷翔平が近づく「170得点」の歴史的価値 ドジャース一塁コーチが語る「1番打者としての凄み「メジャーの投手たちは、本当に怖がっている」 (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「ハイブリッド型の最高のリードオフマン」】

――近年は、フィラデルフィア・フィリーズのカイル・シュワバーのように、パワーのある打者を1番に起用するチームが増えています。「リードオフ・スラッガー」という考え方で、大谷もその一例と言えますが、彼のリードオフマンとしての役割については、どう評価されていますか?

ウッドワード(以下、CW)「翔平はホームランを打つだけでなく、出塁し、スピードでプレッシャーをかけ、チームの攻撃に勢いをもたらす。そういった伝統的な1番打者としての基本(の強み)もしっかり押さえています。そのうえでホームランも打てるし、二塁打、三塁打と長打を量産できる。つまり、出塁するだけでなく、スラッガー(長打を打てる打者)としての側面まで持ち合わせていて、ハイブリッド型の最高のリードオフマンだと言えます」

――では、史上最強の1番打者(通算1406盗塁、2295得点の記録を持つ)とされるリッキー・ヘンダーソンと比べて、大谷選手はどのような位置づけにあると思いますか?

CW「リッキーは間違いなく偉大な選手でした。盗塁のスペシャリストであり、走塁技術においては群を抜いていました。それに加えて、長打力もあって、単なる"足の速い選手"にとどまらず、攻撃的なリードオフバッターとして試合にインパクトを与えられる存在でした。

 でも、翔平のほうがパワーという面では確実に上です。リッキーのシーズン最多本塁打は28本だったと思います。それに対して、翔平には年間50本塁打を打つ力があります。リッキーは、初球でホームランを打って流れを一気に変えることもあれば、じっくりと四球を選んで出塁し、すかさず二盗を決めるようなプレーもできる、本当に投手にとって厄介な選手でした。でも翔平は、それ以上のパワーを持っていて、しかもまだ1番打者としては2年目。私は、彼がこれからさらにリードオフマンとして成長し、唯一無二の存在になっていくと信じています」

――今季、大谷選手が1番打者として、特によくなったと感じる点はどこですか?

CW「出塁に大きな価値を置いているところですね。多くのパワーヒッターは、とにかくホームランを打ちたいと考えるので、スイングの回数を増やせばそれだけホームランも増えると思いがちです。でも、振り回しすぎると、本当に打つべきボールを見逃してしまったり、逆にホームランにはならない球に手を出してしまったりして、結果としてカウントが不利になり、アウトになってしまう。

 その点、翔平はただストライクかどうかを見ているのではなく、自分が本当にダメージを与えられるボールを辛抱強く待っている。以前よりも我慢強くなっていますし、この点に関しては、まだまだ伸びしろがあると思っています。

 というのも、メジャーの投手たちは、打者・翔平の存在を本当に怖がっています。たとえ二塁打を打たれたとしても、"ホームランじゃなくてよかった"とホッとするくらいです。だからこそ、翔平が四球を選んで一塁に出たときには、私は必ず『グッド・アイ(いい目をしていた)』と声をかけます。というのも、翔平だけでなく、ドジャースの打者全員がこうした姿勢を徹底することが、われわれがワールドシリーズで勝つためのカギになるからです」

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