大谷翔平と真っ向勝負できるブルージェイズ先発陣 菊池雄星との花巻東高「先輩後輩対決」筆頭にすべてが見どころに (3ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【ブルージェイズ移籍後に開眼】

 2022年からブルージェイズに移籍。このチームの投手コーチには、元横浜DeNAベイスターズのピート・ウォーカーがいて、他球団で活躍できなかった投手を再生させることで有名。菊池についても潜在力を買い、3年契約を与えた。この年はその第一段階で途中からローテーションを外れることになったが、結果的にそれが転機となった。

 菊池にはマウンド上で考え過ぎる悪癖があった。投球フォームに違和感を覚えると、打者よりそちらに気を取られる。だが、リリーフ投手だと同じようにはいかない。

「先発投手だと登板の準備に1時間から2時間もかけられる。ところがリリーフ投手だとブルペンで10球投げただけで、試合に出ないといけないことも何度かあった。でも少ない準備でも試合で同じような球を投げられた」

 菊池がこう振り蹴ったように、リリーフ登板した12試合では、18.3イニングで33奪三振と圧倒した。

 対大谷も悪くなかった。90マイル(144km)の高速スライダーが有効で、5月28日の対戦はスライダーに二ゴロ、空振り三振、フォーシームに中飛。8月26日はスライダーに一ゴロ、二ゴロだった。メジャーの看板選手となった後輩に、先輩の意地を見せた。

 2023年、先発ローテーションに復帰。MLBは新ルール、ピッチクロックを導入したが、これも菊池には都合がよかった。時間が限られているから、余計なことを考えずポンポン投げ込む。自らのフォーシームの威力を信じ、ストライクゾーンを攻めた。捕手もミットをコーナーに構えるのではなく、ゾーンの中に据えた。

 大谷との対戦は4月9日、シーズン2試合目の登板だった。この時は後輩にリベンジされた。1打席目はスライダーで一ゴロに仕留め、この時点では10打席連続で討ち取っていたが、2打席目は大谷がインコースのスライダーを狙い打ち。センター左のスタンドに運んだ。3打席目も内角高めのスライダーを中前打とした。試合後、菊池は「肩口から入ってくるボールで一番飛ぶところ。もう少し外に投げきらなければいけなかった、失投ですけどそこを見逃さずホームランにするというところでレベルの高さを感じました」と称えた。

 過去との違いを感じたかという質問には「当然毎年レベルアップはしている。僕自身も彼に負けないというよりも、このリーグで勝つために自分を磨き続けているので、今日は打たれましたけどまた次頑張りたいなと思います」と語った。

 この試合の菊池は5回途中まで投げ6失点と散々な出来だった。しかし4月、ほかの4試合はトータル3失点でヤンキース、タンパベイ・レイズを倒すなど勝利投手になった。

 その勢いに乗り、2023年は前述の好成績となった。そして今回、メジャーのトップ選手同士として真っ向勝負に臨む。

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