山本由伸は「公称178cm」の身長でもメジャーで活躍できるのか サイ・ヤング賞を受賞した小柄投手は84人中8名 (3ページ目)
【サイ・ヤング賞に身長6フィート未満が少ない理由】
8人それぞれの身長は、5フィート10インチが3人と、5フィート11インチが5人。リリーフ投手として活躍したマーシャルは、記者・作家のノーマン・マハトに「実際の身長は5フィート10インチではなく5フィート8.5インチ(約174.0cm)だ」と語ったという。
ヤンキースのエースだったフォードとギドリーのうち、フォードは殿堂入りしている。スクリューボールを決め球としたバレンズエラは、サイ・ヤング賞と新人王を同年に受賞した史上唯一の投手だ。当時の快投に惚れた熱狂的なファンは「フェルナンド・マニア」と呼ばれた。
コローンは45歳までメジャーリーグで投げた。メジャーデビューした当時は体重も多くはなかった。リンスカムはステップの広いダイナミックなフォームから連続サイ・ヤング賞の翌年も含め、3シーズン続けてリーグトップの奪三振率を記録した。
84人のサイ・ヤング賞投手中、身長6フィート未満は8人なので、多いとは言えない。彼らと比べると6インチ(約15.2cm)以上高い、身長6フィート5インチ(約195.6cm)以上の受賞者は、ランディを筆頭に13人を数える。
もっとも、現在の先発投手やこれまでのサイ・ヤング賞投手に身長6フィート未満が数えるほどしかいないのには、こんな理由もあると思われる。スカウトや球団関係者に身長の低さを懸念され、プロ入りする機会を得られなかった投手も多いのではないだろうか。
ペドロの場合も、兄のラモン・マルティネスがいなければ、そうなっていたかもしれない。
ラモンは1984年のロサンゼルス・オリンピックにドミニカ共和国の投手として出場し、その年の9月にロサンゼルス・ドジャースと契約を交わした。ラモンの身長は6フィート4インチだ。
ドジャースが当時17歳のラモンをドミニカ共和国のアカデミーに送り込んだ時、13歳のペドロも一緒についてきた。ラモンとキャッチボールをしていたペドロは、その投球がスカウトの目に留まり、16歳になった時、ドジャースに入団した。
もっとも、プロ入り前ならいざ知らず、現在の山本には、無関係の話だ。日本プロ野球ですばらしい実績を残し、すでにメジャーリーグ各球団の関係者から熱い視線を注がれている。
小柄なことから、スタミナに不安を感じるかもしれないが、山本はここ3年のレギュラーシーズンに計550.2イニングを投げている。山本に次ぐのは、髙橋光成の504.1イニングだ。メジャーリーグでも、2021年〜2023年に550イニング以上の投手は、8人しかいない。
著者プロフィール
宇根夏樹 (うね・なつき)
ベースボール・ライター。1968年生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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