藤浪晋太郎が在籍したアスレチックス本拠地は「昭和のパ・リーグ」ラスベガス移転で生まれ変わるか (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Getty Images

 近年は、数年おきにやってくるMLBの日本開幕シリーズの"かませ犬"役としてしか認知されていなかったアスレチックスが藤浪晋太郎を獲得したのは、その荒削りな才能に光明を見出したからだろうが、今や世界でもトップを争うほどの人気球団である阪神タイガースのブランド力を利用した可能性もある。

 ロサンゼルス郊外に本拠地を置く、ある意味でアスレチックスと同じ立ち位置のアナハイム・エンゼルスは、大谷翔平を獲得したおかげで日本人ファンがスタジアムに押し寄せ、グッズも驚異的なペースで売れている。高校時代は大谷以上の逸材とも言われた藤浪に期待を寄せたのも頷ける。

 しかし藤浪は、メジャー移籍後も課題であった制球難を克服できず、先発投手としては結果を残せないまま、リリーフへと回った。一時期2ケタに迫ろうかという防御率の一方で、チームの勝ち頭になっていたが、それだけ登板機会が多かったということだ。

 そしてアスレチックスは、ポストシーズンを狙うボルチモア・オリオールズという"売り先"が見つかると、さっさと売り渡してしまった。このチームにとっては、数年後のビジョンよりも、いま手に入るキャッシュのほうが重要なのだ。

 ある日の試合前、スタジアムにいたベテランカメラマンが声をかけてきて、「大谷はいないけど、ウチにも日本人がいるんだ」と藤浪の名を出してきた。

「彼はこの前、トレードに出されたよ」と返すと、「えぇ?? アイツ、いなくなっちゃったのか」と驚きの声を上げていた。

 つまり、藤浪のオークランドにおける存在は、その程度だったというわけだ。世界中からタレントが集まるアメリカ球界は、メジャー、マイナー問わず、各国から選手がやってくる。アスレチックスのマイナーの試合を見に行った時は、台湾人投手が先発のマウンドに上がっていた。アメリカの野球ファンはそれを珍しいことともとらえず、彼らが卓越したパフォーマンスを示したあとに受け入れる。

 結局のところ、藤浪はオークランドの人々の心をつかむ前に去ってしまった。

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