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イチローが「勝敗に関係なく打ちたかった」
シアトル凱旋弾への想い (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

 その初球、やや高めに来た91マイル(146キロ)のストレートにイチローの体が反応する。低い弾道の打球は、緊張感の伴うしばしの間をあけて、ライトスタンドへ突き刺さった。

 イチロー、ホームラン。

 誰もが期待する場面で、その期待を超えてくるのがイチローだ。

「詰まっていたからね。外野手を越えたとは思ったけど、あの感じで、ここでホームランを打ったことがなかったんで......あれで入るんだという感じでした。これは印象には残るわね。(マリナーズの)ファンも喜んでいい点差だし、そういう意味では理想的な場面ではありましたから......(打席に入る前から)イメージはあるじゃないですか。ただ、それが実現するかどうかは別の話で、そうなったら、そりゃいいよな、でもなかなか難しいよな、ということでしょう(笑)」

 この今シーズンの初ホームランは、それだけでいろんな記録がついてきた。日本でプレーしていた時期を含めて25年連続のホームランは、メジャーではリッキー・ヘンダーソンに並び、日本では谷繁元信に次ぐ、野村克也と並んでのタイ記録となった。同時に今シーズンの初打点はメジャー通算761点目。これは、松井秀喜が持つ日本人選手の最多打点の記録を塗り替えることとなった。

「そうだった、(打点の記録のことは)忘れてた。そうかぁ......ホームランでね(笑)。ボブルヘッドのことはもちろん知っていたし、(シアトルの球団もファンも)全部を期待以上のもので表現してくれてましたから、最後、ホームランを打ててよかった。これだけ盛り上げてくれて、寂しい感じで帰りたくないから、今回はゲームの勝ち負けに関係なく、それ(ホームラン)を打ちたかったという思いはとても強かったですね」

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