初対決から15年、イチローと松坂大輔がともに背負ってきたもの (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by AFLO

 5月12日(現地時間)、ヤンキースタジアム。

 ともにニューヨークを本拠地とするア・リーグのヤンキースと、ナ・リーグのメッツが戦う、4連戦。ヤンキースタジアムがあるブロンクス地区と、シティフィールドがあるクイーンズ地区が地下鉄でつながっていることから、このマッチアップは"サブウェイ・シリーズ"と呼ばれている。

 そして今年の見どころはもちろん『イチロー対松坂だ』......という向きは、残念ながら少数派だったろう。

 今シーズンのイチローの役割は、レギュラーとされる外野手3人のバックアップである。サブウェイ・シリーズの前までにチームが戦った37試合中、イチローが先発したのは13試合だけだ。先発を外れての守備固め、代走など、欠場も含めて打席に一度も立てない試合が18もあった。それでも限られた機会の中で、イチローは55打数20安打、打率.364と、好調を維持していた。

 一方の松坂は開幕ローテーションの座をヘンリー・メヒアと争い、開幕直前にマイナー行きを通告された。3Aでの二度の先発機会に好投し、4月16日にはメジャー昇格を果たすものの、先発を任されることはなく、慣れないブルペンでのスタンバイが続いた。リリーフで10試合に登板し、7試合を無失点で切り抜け、防御率は2.63。メジャー8年目で初セーブもマークした。

 ベンチスタートでも、ブルペンスタンバイでも、今年のイチローと松坂は与えられた役割を全うしてきた。それぞれが厳しい立場に追い込まれながらも、懸命に高いモチベーションを維持しようと努めてきたのだ。

 それこそが、彼らの"プライド"なのだと思う。

 そんな今のふたりを、サブウェイ・シリーズで見たかった。先発の松坂と、スタメンのイチローでなくてもいい。1打席でいいから、ヤンキースのイチローとメッツの松坂の勝負が見たかった。

 しかし――野球の神様は気紛れだ。

 メッツとの4連戦を、イチローはすべて欠場した。サブウェイ・シリーズの直前、ブリュワーズとのゲーム中、腰を痛めたからだ。そして松坂は2試合目の5回途中からマウンドに上がった。

 テンポよく、91マイル、92マイルのストレートをどんどん投げ込む。

 カットボールの球速も、ストレートとさほど変わらない。

 時折、スライダーやカーブ、チェンジアップを織り交ぜるものの、組み立ての軸はあくまでも速球系だ。しかも、ストレートもカットボールも勢いがあって、相手のバットを押し込む。

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