初対決から15年、イチローと松坂大輔がともに背負ってきたもの
ヤンキースのクラブハウスで、イチローが訊いてくる。
「ダイスケ、どんなボールを投げてるの?」
「スピードは?」
「フォームは?」
たたみかけるような質問に、「かなり力のある真っすぐを投げてるよ」「92マイルは出てるんじゃないかな」「フォームは前とはまったく違うよ」と、矢継ぎ早に答えていく。すると、イチローがひとこと、こう言った。
「へーっ、そうなんだ」
今回、サブウェイ・シリーズでの対戦はなかったイチローと松坂大輔。
その瞬間、イチローはこちらがビックリするような、嬉しそうな顔をした。
メッツのクラブハウスでは、松坂大輔が訊いてくる。
「イチローさん、練習に出てきますか」
「なんで腰痛めたんですか」
「対戦できないのかなぁ」
これまた、たたみかけるような質問に、「グラウンドには出てこないかもね」「ミルウォーキーでライトフライをヒザで滑って捕りにいこうとしたら、芝が土ごと剥がれて、ブレーキがかかっちゃったみたい」「最近、どんなボールを投げてるのか、気にしてたよ」と、こちらも矢継ぎ早に答えていく。すると、松坂はひとこと、こう言った。
「これが今シーズン、唯一の楽しみだったのになぁ......」
その瞬間、松坂はこちらが想像したとおりの、落胆した表情を浮かべた。
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