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【ドラフト】プロを意識しない男にスカウトが熱視線 社会人5年目、Honda・片山皓心がいよいよ本格化 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 今の片山の姿こそ、中山さんが求め続けた「花開く瞬間」に違いない。

 一方、片山は今も中山さんと連絡を取り合い、時には耳の痛い指摘を受けることがあると明かした。

「野球の技術的なことより、投手としての所作の部分を言っていただきました。都市対抗予選でピンチの場面を抑えてベンチに帰ってきた時、ホッとした様子を中山先生に見抜かれて。先生はスタンドで見ていて、『ちっちゃいな』と感じたそうなんです。確かにそうだなと思って、それからはオープン戦でも喜怒哀楽を出さないように意識するようになりました」

 日立製作所戦のラストバッターを空振り三振に仕留めた瞬間、片山は派手なガッツポーズを取ることもなく、淡々と整列に並んだ。片山は「次(日産自動車との関東最終予選・代表決定戦)もあるので(※7対1でHondaが勝利。片山は登板機会なし)」と表情を引き締める。その顔は、社会人の中心投手らしい自覚が滲んでいた。

 プロに進むことがすべてではない。それでも......と思ってしまう。ストレートの球威、決め球になる変化球、長いイニングを投げられる体力、長いリハビリに耐えたメンタリティー、野球への真摯な取り組み。最高峰の舞台で輝けるだけの要素は揃っている。

 ドラフト会議まで1カ月を切った段階で、すでに2球団が片山に調査書を求めている。結実の時を迎えつつある左腕を放っておく手はないのではないか。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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