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【ドラフト】プロを意識しない男にスカウトが熱視線 社会人5年目、Honda・片山皓心がいよいよ本格化 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 近年には故障明けの大卒5年目にドラフト2位指名を受けた、森田駿哉(Honda鈴鹿→巨人)の例もある。即戦力級の実力を持つ片山なら、森田に続く可能性は十分にある。

 片山はよくこんな言葉を口にする。

「自分はスピードガンの数字では勝負していないので」

 ストレートに自信がないという意味ではない。むしろ、片山の最大の武器と言っていいだろう。球速は140キロ台前半でも、ホームベース付近で球威が落ちない。Hondaの多幡雄一監督は、片山の魅力についてこう語る。

「フォームに柔軟性があって、左腕が遅れて出てくるなかで、強いストレートで詰まらせられます。打者からすると、わかっていても打てないボールでしょう。チェンジアップ、スライダーのコントロールもよくなって、狙い球を絞れなくなったはずです」

【ドラフトは縁なので...】

 プロへのラストチャンスに懸ける──。そんな悲壮な覚悟で戦っているのか。だが、片山に聞いても否定の言葉が返ってくる。

「正直言って、(プロへの思いは)そんなにないですね。去年もそうだったんですけど、ドラフトは縁なので......自分が意識することではないのかなと。今は自分のチームで投げてこそだと考えて、目の前の試合に集中するようにしています」

 もし指名を受ければ、喜んでプロへと進む。Hondaの多幡監督も「片山の夢を応援したい」と背中を押す。しかし、ドラフトを意識するあまり、パフォーマンスが乱れては本末転倒だ。生半可な覚悟で試合に勝てるほど社会人が甘い世界ではないことを、片山はよく知っている。

 9月25日、等々力球場での日本選手権関東最終予選・日立製作所戦の先発マウンドに片山は上がった。

 立ち上がりから走者をためるシーンも多く、本人は「調子がよかったわけではない」と明かす。だが、許した安打はすべて単打。ストレートも変化球もコースを丹念に突き、スコアボードに0を重ねていった。

 日立製作所の3番・中堅として出場した清水大海(ひろうみ)は、日立一高(茨城)時代の2学年後輩だった。今やチームの顔になった清水に対し、片山は1打席目に四球、2打席目に中前安打と相次いで出塁を許した。

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