【ドラフト】プロを意識しない男にスカウトが熱視線 社会人5年目、Honda・片山皓心がいよいよ本格化 (3ページ目)
しかし、片山の内面に「後輩との対決」というウェットな感情はなかった。
「チームのミーティングでも『一番警戒するバッター』として大海の名前が挙がっていたので。後輩だからという理由で意識することはなかったです。最初から出塁されてしまって、相手が上手だったなと感じます」
しかし、3打席目以降は片山がやり返す番だった。3打席目は、左打者の清水の外角にクロスファイアーを突き刺し、見逃し三振。4打席目は、内角のストレートで詰まらせ、一塁フライに仕留めた。
試合はHondaが4対0で完封勝ち。片山が9イニング、128球を投げ切り、10奪三振をマーク。左ヒジ手術明けの初完封勝利で、コンディションの不安がないことを証明した。等々力球場のスタンドには、スカウト4人体制で片山の視察に訪れた球団もあった。
【おまえの伸びしろは半端ないんだ】
そして、バックネット裏には日立一高時代の恩師である、中山顕さん(現・那珂湊高)の姿もあった。中山さんは2015年夏に、公立進学校の日立一を茨城大会準優勝に導いた指導者だ。中山さんは「教え子の初対決を見たくて来たんですけど、ふたりともに活躍してくれてうれしいです」と目を細めつつ、片山の投球についてこう語った。
「都市対抗前に投球を見る機会があったのですが、今日よりもストレートがよかったです。でも、今日も要所でいいボールがきていますし、日立の強打線を相手にストレート中心で抑えているのはすごいですね」
片山は準優勝した高校2年時、背番号1をつけていた。だが、実質的なエース格は同学年の鈴木彩斗。つまり、片山は控え投手に甘んじていた。
当時の片山は、球速は常時120キロ台。コントロールはアバウトで、好不調の波が激しかった。それでも、肩周りの柔軟性は当時から際立っており、指にかかったボールは底知れぬ可能性を感じさせた。
中山さんが高校時代の片山に対して、こんな叱咤激励をするシーンを目撃したことがある。
「おまえの伸びしろは半端ないんだ。すごい力が眠っているんだよ。オレはそれが花開く瞬間を見たいんだ」
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