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【夏の甲子園2025】下級生にポジションを奪われた仙台育英の背番号15・今野琉成が明かす「日本一激しいチーム内競争」の舞台裏 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 同じ遊撃を守る今野は、砂の能力を認めている。

「砂の守備は本当にうまいですよ。いつも一緒にノックを受けていて、強く思います。足の使い方がうまくて、いつもバウンドに入るタイミングを同じにできる。難しいバウンドでも、難しく見えないんです。後ろで見ていても、『簡単そうに捕るな』と思います。それは自分もいい影響を受けています」

 シートノックを見る限り、今野の守備も十分にハイレベルではないか。そんな感想を伝えると、今野は首を横に振ってこう答えた。

「ノックはだいたいどこにくるかわかるじゃないですか。バウンドを把握すれば、だいたい捕れるので。ノックは普通にできても、試合で発揮できなければ意味がないので」

 この言葉を聞いて、今野や砂が戦っている次元が伝わってきた。シートノックでは、華麗にプレーできて当たり前。問題は、公式戦の緊迫した場面でも同じプレーができるかどうかなのだ。今野は「試合のほうが力が入ってしまうんですよね」と自身の課題を明かした。

 須江航監督が砂を評価するポイントも実戦性にある。須江監督は今野の力量を高く評価しつつも、砂を先発起用する理由を語った。

「今野も砂も、ノックでの力は変わりません。投力に関しては、今野のほうが強いでしょう。でも、砂は試合のなかでのプレーの選択がいいんです。ここはランニングスローでいくべきか、待って捕るべきか、逆シングルで捕るべきか、股を割って捕るべきか。そういった実戦力は砂のほうがやや上でした。攻撃面ではスケールのあるタイプ、たとえば川尻(結大/3年)や高田(庵冬/3年)のような選手はいるんですが、間をつなぐタイプを欲していました。砂は打球角度が低く、進塁をアシストできる選手としてフィットしたんです。今野は体こそ小さいのですが、意外と打球角度が出る打者。低反発バットに変わる前なら、きっとスタメンで出ていたでしょうね」

【心に秘めたライバル】

 今野は今、砂と有本が試合で力を発揮できるよう、サポートに心を砕いているという。

「1年生にはのびのびとプレーしてもらいたいので、常に『頑張れよ』と声かけしています。自分も1年生の時に試合に出させてもらって、先輩からのびのびやらせてもらったので。須江先生からは『失敗を恐れずにやっていいよ』と言われて、気持ちが楽になりました」

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