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【高校野球】中学時代に日本一となった日大鶴ヶ丘のエース・住日翔夢が逆境を強みに変えて進化 亡き恩師に誓う甲子園とプロ入り (3ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu

 萩生田監督は「ゆっくりではありますが、大きなケガもなく、右肩上がりの成長を続けてくれています」と語り、その将来性に太鼓判を押す。

「まだまだ伸びしろがあります。筋肉もインナー、アウターともにまだまだですし、みっちりトレーニングに積んでいければ、もっとよくなるでしょう」

 進路についても、住は「幼い頃からプロ野球選手になるという夢を追いかけてきたので、ここまでレベルを上げることができた今、もっと高いレベルで自分がどこまで通用するのか試してみたいと思いました」と話すようにプロ一本に絞った。

 萩生田監督も「保険をつくるくらいなら、最初から大学に行けという方針です。自信や覚悟がないと通用する世界ではありませんから」ときっぱり。そうした指導方針のもと、いわゆる"プロ待ち"の進路はせず、たとえ育成指名でもNPBに進むという強い覚悟を固めた。

【亡き恩師に誓う2つの夢】

 そしてこの夏、住には活躍することで恩返ししたい人がある。公立の上一色中を全国屈指の強豪に育て上げた名指導者であり、住の恩師である西尾弘幸さんだ。

 西尾さんは4月末、膵臓がんにより67歳で他界。住も大きなショックを受けたが、「試合での投球術やテンポの大切さを教えてもらいましたし、人間的な部分でも"徳を積む"ことの大切さを学び、それが試合に出るということを教えてもらいました」と、恩師の教えを今も心に刻んでいる。

 そして今、「甲子園出場」と「プロ入り」という2つの夢を、天国の西尾先生に届けたいと思っている。

 中学時代の実績におごることなく、持病や環境といった"ハンデ"も言い訳にせず、むしろ強みに変えてきた住日翔夢。地道に積み重ねてきた努力を胸に、最後の夏で真価を発揮し、チームと自身の未来を切り拓いていく。

著者プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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