元大阪桐蔭・福森大翔は、医師に「そう遠くないうちに命が尽きる」と告げられても、「やれることはすべてやる」と覚悟を決めた (2ページ目)
ところが、9月の検査でリンパと肝臓へ複数の転移が発覚したのだ。
「転移が見つかった時は、とにかく申し訳ない気持ちで、妻にむちゃくちゃ謝りました。これ以上、再発も転移もなく進んで、がんを乗り越えようとふたりでやってきたのに、『ほんまゴメンな』って。
でも、謝る僕に妻は怒ってきたんです。『私は何があってもあなたと一緒におるし、覚悟を決めたんやから、もっと前を向いて! 今回も乗り越えていくんやから、謝るなんておかしい』って。その言葉を聞いて、『なんて素敵な人と出会ったんだ』って、心の底から思いました」
昨年10月、リンパ転移した腫瘍を取り除く3度目の手術のあと、いったん退院するも12月頭にMRSA感染症にかかって高熱が続き、再び入院した。それでも担当医に「12月7日だけは外へ出してください」と外出許可を取り、妻とふたりで婚姻届を提出しに役所へと向かった。続けて記念写真を撮ると、すぐさま病院に戻り、クリスマス前まで入院生活が続いた。
【まだ死にたくない】
「こうして振り返ると、自分のことながら次から次に......。なんかドラマみたいじゃないですか?」
そう言って、自虐的に小さく笑った。
医療ドラマだったら、スーパードクターが現れて難題を即座に解決してくれるだろうが、現実はそうはいかない。
それでも家族や仲間たちに力をもらいながら、この頃から自身の気持ちのなかに変化が現れてきたという。その時期に行なったセカンドオピニオンが大きなターニングポイントになったと、福森は語る。
訪ねた先の医師からは「当院では症例のないケースなので......」と期待が広がることはなかったが、ほかの病院にGIST(消化管間質腫瘍)の研究に取り組んでいる医師がいると紹介を受けた。
だからといって希望が見えてきたという話ではなく、むしろその逆だった。担当医となっていく医師からは「このままではそう遠くないうちに命が尽きる」と言われ、複数転移が確認された肝臓についてはこれ以上の手術は難しく、今後やれることは抗がん剤治療だけになると告げられた。それも寛解を目指すものではなく、延命のためのものだった。
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