【選抜高校野球】幻の「最速158キロ」右腕、健大高崎・石垣元気は「球速」よりも「球質」を追求する (3ページ目)
試合後、報道陣は何度もしつこく体調面の質問を繰り返したが、石垣はそのたびに無垢な笑顔で万全をアピールした。
「トレーナーさんに電気治療をやっていただいて、痛みが1日1日だんだん減っていったので、よくなっていると思います」
「(パフォーマンスのパーセンテージを聞かれて)80くらいです。今日は久しぶりの実戦だったので、まだ抜けている感じはあります」
「(試合後の左脇腹の痛みは)試合が終わっても痛くないです」
そして、石垣に課題だった「球質」の手応えについて聞くと、嬉々とした表情でこんな答えが返ってきた。
「去年の秋と比べて、真っすぐで前に飛ばせないボールが最近になって増えてきました。質はよくなっていると思います」
技術的な変化があったのか重ねて聞くと、石垣はニッコリと笑って「特に意識してないです」と答えた。
捕手の小堀も同様に、石垣の進化を感じ取っている。
「真っすぐの質は彼自身、大きな課題として取り組んだと思います。今年に入って手元でクイッと伸びる球が増えて、フライアウトが多くなっています。ホームベース付近での強さが増したように感じます」
とてつもないパフォーマンスを見せたからといっても、登板翌日になってダメージがふりかかるケースもある。今後も石垣の回復の経過は、慎重に見守りたいところだ。
それ以上に、石垣が「158」という数字に踊らされることなく、質にこだわって成果を披露したことに価値がある。
あらためて石垣に聞いてみた。あの昨秋の「158」という数字は、どう受け止めているのかと。石垣は微笑を浮かべて、こう答えた。
「あれは自分の記憶のなかで消しています。明らかに出てないと思っているので」
幻の「最速158キロ」とはいえ、いずれ近い将来の通過点になるはずだ。高校球界のスピードキング・石垣元気は、着実に階段を上がっている。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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