【選抜高校野球】幻の「最速158キロ」右腕、健大高崎・石垣元気は「球速」よりも「球質」を追求する (2ページ目)
捕球した小堀弘晴は、こんな体感を語っている。
「あれ(158キロ)はちょっと引っかかった球で、力が乗ったボールじゃなかったです」
そして、「158」という数字が注目されるあまり、石垣の抱える課題が置き去りにされる可能性もあった。昨秋時点で、石垣はスピードガンの数字は出ていても、打者のバットには頻繁に当てられていたのだ。
石垣の昨秋の公式戦防御率は2.08。石垣より多い投球回を投げた同期左腕の下重賢慎は、防御率0.30である。石垣の課題が「球質」にあるのは明らかだった。
石垣の1学年先輩で、昨年の春夏にバッテリーを組んだ箱山遥人(トヨタ自動車入社)はこんな見方を示していた。
「(石垣は)言われるほどエグいボールではないですから。上背がそれほどないし、コントロールもまだまだ。本人が自分自身をどう見ているか。考えて取り組まないと、ボールの質は変わらないと感じます」
【甲子園で投じた衝撃の5球】
今春のセンバツ開幕を5日前に控えた13日、ショッキングなニュースが流れた。石垣が練習中に左脇腹を痛め、センバツでの登板が微妙になったというのだ。
当初は1〜2カ月の安静が必要と診断されたが、石垣は驚異的な回復を見せる。18日の明徳義塾(高知)との初戦で登板回避した時には「5〜6割」と回復具合を語っていたのが、中4日空けた23日の敦賀気比戦では「ほとんどMAXに近い」と語っている。
もちろん、大会期間中の選手のコメントだけに、すべて鵜呑みにするわけにはいかない。故障を隠して強行出場し、症状を悪化させた前例はいくつもあるからだ。
ただし、敦賀気比戦で石垣が投じた5球を目撃した人間は、「ほとんどMAXに近い」という言葉に強い説得力を覚えたのではないか。全球が150キロを超え、石垣が1球投げるたびに球場のどよめきは大きくなっていった。最後はこの日最速タイとなる152キロで詰まらせ、ショートフライ。試合を締めくくっている。
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