【選抜高校野球】もはや「冬のセンバツ」 極寒の甲子園で選手たちはどう戦ったのか?
「寒いですね......」
甲子園球場のスタンドで知り合いとすれ違うたびに、何度そんな挨拶を交わしたか数えきれない。
末吉良丞の好投もあり青森山田に勝利した沖縄尚学 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
【開会式は体中にカイロ】
3月18日に開幕した選抜高校野球大会(センバツ)は、初日から極寒状態が続いている。大会2日目は最高気温9度。登山に行くような完全防備でスコアブックをつけていても、手はかじかみ、文字が震えてしまう。もはや「冬のセンバツ」である。
かつて横浜高の名伯楽と呼ばれた小倉清一郎さんは、春と夏の甲子園の違いについてこう語っていた。
「スタンドの見え方が違います。夏は薄着で白い服の人が多いから、ボールと重なって見づらいんです。でも、春はみんな厚着をしていて、黒い服装の人が多い。だからボールが見やすいんです」
四季がある日本の、屋外球場ならではの視点だろう。
18日の開会式当日、沖縄から初出場したエナジックスポーツの砂川誠吾は、こんな感想を述べている。
「こっちに来てから、毎日100回くらい『寒い』って言ってるような気がします。沖縄ではとても感じられない寒さですね。手も耳も痛くて......。沖縄では年中ボールを使って練習ができるので、まだ慣れないです。でも、このなかで野球ができるのは新鮮ですし、光栄です」
今大会に出場した選手・関係者は、「寒さ」というもうひとつの敵にどのように立ち向かっているのだろうか。
開幕戦に登場した柳ヶ浦(大分)の遊撃手・亀安歩汰は、「カイロ作戦」を実行したと明かしてくれた。
「開会式で体が冷えないように、体中にカイロを貼りまくりました。背中、脇腹、太もも、足の裏......と、ほぼ全員が貼っていましたね。開会式が終わって、キャッチボールが始まる前に背中以外ははがしました」
亀安によると、これだけカイロを貼っても開会式は寒かったという。それでも、試合が始まれば「寒くてもやらなくちゃいけないので」と集中。試合開始直後から遊撃で好プレーを連発している。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。