【選抜高校野球】智辯和歌山が使う1200グラムの極重木製バットは高校野球を変えるか?
今春のセンバツで革新的な木製バットの使い方をするチームがある。優勝候補の一角に挙がる智辯和歌山だ。
1200グラムの木製バットを使用する9番打者の黒川梨大郎 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
【極重バットがもたらす効果】
長打が期待できるクリーンアップは金属バットを使っているのに、木製バットを使うのは7番打者の大谷魁亜(かいあ)と9番打者の黒川梨大郎(りんたろう/2年)。大谷は身長175センチ、体重72キロ、黒川は身長172センチ、体重70キロと平凡な体つきである。
しかも、その木製バットは異様な形状をしている。グリップからヘッドに至るまで、全体的に太い。重さはなんと1200グラムもある。金属バットの規格は「900グラム以上」と決められているため、最軽量の金属バットより300グラムも重いのだ。
また、新基準バットの導入によって、金属バットの最大直径が67ミリ未満から64ミリ未満に変更された。つまり、細いバットを使わざるを得なくなったのだが、木製バットのBFJ(全日本野球協会)規格は「最大で2.61インチ(約66ミリ)」となっている。大谷と黒川のバットはもともとトレーニングバットだったものを、公式戦で使えるようにBJF規格に合わせてオーダーしたという。
つまり、大谷と黒川は「太くて重いバット」を使っていることになる。
3月21日、智辯和歌山は千葉黎明との1回戦に6対0と快勝した。大谷は2打数1安打、黒川は4打数2安打1打点と勝利に貢献している。大谷は昨夏からこの"極重バット"を使っているという。
「自分は体が大きくないし、パワーがないので、中谷(仁)監督から『使ってみんか?』と言われたんです。バットを短く持って、飛ばすというより逆方向に単打を打つイメージです。アウトコースの球を引きつけて、コンパクトに当てるだけで強いライナーが飛んでいきます」
この試合、大谷は犠打も決めているが、バントをする際にも「金属バットより打球が死んでくれる感覚があります」と効用を語ってくれた。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。