佐々木麟太郎の初ホームランにチームメイトが歓喜 充実のスタンフォード大学生活
待望の本塁打が出たスタンフォード大の佐々木 photo by Bob Drebin/ISI Photosこの記事に関連する写真を見る
佐々木麟太郎のスタンフォード大学Life 前編
アメリカのスタンフォード大に進学した佐々木麟太郎に、ついに待望の初ホームランが出た。同じ試合で2本目、次の試合でももう1本放つなど、"らしさ"を発揮し始めている。
佐々木にとってアメリカ屈指の学力を誇る同大の環境、チームメートや指導者との過ごす時間は、どのようなものなのか。
初本塁打が出る前の独自取材も含めて、紹介する。
【17試合目の初HRからの1試合2発&2試合連続弾】
3月15日(現地時間)に行なわれたスタンフォード大対デューク大戦の5回。佐々木麟太郎は先頭打者として、この試合3度目の打席に立った。第1打席は、ピッチクロックバイオレーション(*)により見逃し三振となり、第2打席は捕ゴロ。実況アナウンサーが、「彼は、今日ここまで少し不調です」と話した瞬間だった。2ボール、1ストライクから高めのストレートを強打。
(*)打者は、制限時間の残り8秒までに打席に入り、投手に注意を向けていなければならない。それを怠ると1ストライクを宣告される。
「いや、この一打は違います! 間違いなく、佐々木の第1号です!」
アナウンサーは、すかさず叫んだ。本人も手応えがあったのだろう。打撃直後、バットを持って数歩前進しならボールの行方を追った。打球はライトのフェンスを越え、開幕17試合目にして初本塁打。ホームスタジアムの観客に右手を上げて歓声に応え、ダイヤモンドを走る佐々木を見ながら、アナウンサーは、「本当なのかい!? ササキリンタロウガ ダイガク ハツホームラン!」と、おそらく1戦目から用意していたであろう日本語で、声を張り上げた。
佐々木が打った瞬間、ベンチの柵にもたれかかって見ていたチームメイトらが、一斉に手を上げた。スタンフォード大の球場では、同大の選手がホームランを打った時にダンゼルの『put your hands up in the air』を流すことがお決まりで、選手らはリズムに乗りながら、上げた両手を左右上下に振って喜びを表し、佐々木を迎えた。
観客席ではスタンディングオベーションを送るファンの姿、芝生エリアでは同じ大学で日々厳しい勉学に勤しんでいるであろう若者たちが、手舞足踏していた。
7回の第4打席は左中間へシングルヒットを放った佐々木は8-1で迎えた8回、二死一、二塁から、今度は右中間に3ラン。この試合2度目の本塁打は、チームをコールド勝ちに導く"サヨナラ打"となり、ホームで待っていたチームメイトから、もみくちゃにされて祝福を受けた。
試合後、デイビッド・エスカー監督は、「何よりもエキサイティングだったのは、チームのリアクションだ。このチームはとても絆が強い。誰もが彼を受け入れ、彼の成功を見たいと思っている」とうれしそうに話した。
NCAA(全米大学体育協会)1部(以下、D1)の野球シーズン開幕から1カ月。ようやく聞かれた快音だった。この2本で調子づいた佐々木は、翌16日も3ラン本塁打を放ち、同シリーズを終えた時点で18試合すべてに先発出場。3番打者として74打数でチーム最多の25安打、打率3割3分8厘。22打点もチーム最多タイで、3本塁打。出塁しなかった試合はここまで1試合のみで、出塁率は4割2分4厘、長打率5割だ。
3月15日、初本塁打を放ち、チームメイトに迎え入れられる photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
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著者プロフィール
山脇明子 (やまわき・あきこ)
大阪府出身。ロサンゼルス在住。同志社女子大在学時に同志社大野球部マネージャーと関西学生野球連盟委員を兼任。卒業後はフリーアナウンサーとしてABCラジオ『甲子園ハイライト』メインキャスター、サッカーのレポーターなどを務める。渡米後は、フリーランスライターとしてNBA、メジャーリーグ、アメリカ学生スポーツを中心に取材。