星稜の新2年生・能美誠也に見た「勝てる捕手」の資質 センバツからの新ルールにも堂々 (3ページ目)
2点を勝ち越した9回裏には、3番手右腕の道本想(2年)が一死二、三塁という大きなピンチを招いた。だが、この場面で能美は2ストライクから3球勝負を要求。道本が大胆なリードに応えて空振り三振を奪うと、能美はパンチを放つような仕草で喜びを表現した。
試合後、この場面について聞いた際の能美のコメントが振るっていた。
「腹をくくっていました。この場面で追いつかれても、自分のせいではないので」
そう言いきったあと、少し過激な発言だと思ったのか、能美は「(接戦になったのは)周りが打てなかったのが原因ですから」とつけ足した。
4月で高校2年生になる16歳。それでも、聞かずにはいられなかった。将来、どんな捕手になっていきたいのか、と。
「キャッチャーとして打って目立つ、ランナーを刺して目立つというより、陰でピッチャーを支えたり、ポジションを動かしたりして地味に1個1個を重ねていけるキャッチャーになりたいですね。それが結果的に自分の手柄になると思うので」
近年の星稜は山瀬慎之助(巨人)、内山壮真(ヤクルト)と好捕手が続いたが、能美はその系譜に連なる存在になるだろう。「勝てる捕手」はこの春にどこまで勝ち上がるのか。いくら本人が「地味」を目指しても、その底光りする輝きは隠せそうにない。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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