部員19人、別海高校の最大の武器は「揺るぎなきチームワーク」 センバツ初戦の難敵相手にも「臆することなく戦わせてもらいます」
別海高校〜甲子園初出場までの軌跡(5)
秋の北海道大会で目標のベスト4を達成した別海高校は、まもなくして翌春に開催されるセンバツの21世紀枠候補に選出された。
監督の島影隆啓が、選手たちに明示する。
「センバツに行くつもりで練習するぞ」
3月20日のセンバツ初戦で門馬敬治監督率いる創志学園と対戦する別海ナイン photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る
【揺るぎなきチームワーク】
別海は例年、シーズンオフの3週間を選手たちのアルバイトに充てている。遠征費の足しといった実用的な目的もあるが、島影の本当の狙いは地域貢献であり、親をはじめとした選手を支えてくれている人たちへの感謝をその身に刻ませることである。
「お父さん、お母さんが大変な思いをして働く。それを何日もかけて、やっと5万円以上もするグローブが買えるわけです。高校生って、言葉では『親に感謝の気持ちを』と言いますけど、本当に意味ではわかっていないと思うんですね。だから、少しでも親の思いを理解してくれたらという目的で、冬休み期間は積極的にバイトをさせているんです」
この冬は10日間ほどに期間を短縮させた。センバツへ向けチームを強化することが主目的とはいえ、それが支援者への感謝とイコールになるという島影の思いもあったからだ。
秋の教訓を経て、彼らは課題の克服に励む。
エースの堺暖貴は球速アップを目指してウエイトトレーニングの回数を増やし、股関節の柔軟性や胸郭の可動域を広げるなど全身のバージョンアップに努める。中道航太郎は扇の要として守備力の強化を打ち出し、千田涼太、影山航大、寺沢佑翔はバッティングの向上に意欲を見せた。
寺沢が自信を漲らせながら、オフの自分たちの取り組みについて語る。
「自分たちは部員が少ないですけど、その分、チームのコミュニケーションはどこにも負けないというか。守備の連係のよさだったり、つらい練習をみんなで乗り越えられることだったり、それがここ一番での勝負強さにつながると思って練習できていると思います」
揺るぎなきチームワーク。それは、この世代のスローガンとも言える「圧倒的に勝つ」にも深く関係している。
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著者プロフィール
田口元義 (たぐち・げんき)
1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。