PL学園と帝京の名将が振り返る直接対決 中村順司「帝京はPLの弱点を狙わなかった」 前田三夫「やったところで勝てる相手じゃない、真っ向勝負ですよ」 (2ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

●挑む帝京「ひょっとしたらという展開」

前田 PL学園との試合は初回にいきなりホームランを打たれ、1点献上。PLのなかでも小柄な尾崎(晃久)という選手でしたね。そのあと帝京が3連打で4回に追いついて、5回にまた逆転されるんですが、9回表が勝負どころでした。

 ここは四球でランナーが出て、すかさず盗塁。ランナー二塁でバッターが大井(剛)です。彼は夏の甲子園後の日米親善野球の代表メンバーに選ばれ、中村さんは代表チームの監督を務めたのでよく覚えていると思いますが、エンドランをかけたところセンター前へもっていった。一気にランナーが生還し、同点に追いつきました。

2021年に勇退し、現在は帝京名誉監督の前田氏2021年に勇退し、現在は帝京名誉監督の前田氏この記事に関連する写真を見る中村 帝京らしいすばらしい攻めでしたね。この試合でうちは、延長10回から救援した岩崎(充宏)が勝負を引き寄せてくれました。エース番号をつける野村(弘樹)、さらに橋本(清)とつないで3人目の投手。10回にノーアウトランナー一塁からの登板で、ふだんは温厚でおとなしい選手でしたが、よく踏ん張って投げました。

前田 ここでも私はエンドランをかけ、成功します。ランナー一、三塁になり、帝京としては絶対勝ち越さなきゃいけないシーンですよ。でも、次打者が三振。1死後、私は初球スクイズを選択します。

 というのも、打者は補欠の選手でこれまで打席に立った経験がない。あまりに荷が重いと思ったのでスクイズにするしかなかったのですが、岩崎君の変化球に飛びついてバットを出したものの空振り。これで三塁ランナーが三本間に挟まれアウトになってしまいました。

 二死二塁でチャンスは続いたものの、最後は三振に仕留められてあっという間にチェンジ。ここで点が取れなかったのが最後まで響きましたね。がっくりでした。

中村 岩崎は自分の一番得意なスライダーで勝負したんですよ。見事に切り抜けてくれましたね。じつはスクイズの時、捕手の伊藤(敬司)が三塁へ暴投したでしょう。ヒヤリとしたんですが、サードの深瀬(猛)がよく捕ってピンチを切り抜けました。

前田 あ、助かった! と思ったら深瀬君がナイスキャッチ。この場面はよく覚えています。最後は11回裏に、2死一、三塁からライト前にどん詰まりのボールがポトンと落ちてサヨナラ負け。

 芝草の調子がよく、7回からは平山(勝)に代えたんですが、最後に再び芝草をマウンドに戻して勝負に出たんです。打ちとったと思う打球だけに残念でした。ひょっとしたらという試合展開だっただけにね。

1987年センバツ優勝後、PL学園のグラウンドで胴上げされる中村氏 写真提供/中村順司1987年センバツ優勝後、PL学園のグラウンドで胴上げされる中村氏 写真提供/中村順司この記事に関連する写真を見る

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