仙台育英に漂う王者の風格 「慶應は特別な存在」「劣勢にも理想的な展開」で慌てず騒がずタイブレークで勝利 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「声出し応援が解禁になったからこそ、こんなすばらしいゲームができました」

 試合後の会見で、須江監督はそう繰り返した。その言葉に偽りはないだろう。だが、仙台育英以外のチームであれば、慶應義塾の大応援に飲み込まれても不思議ではない試合とも言えた。この一戦を通して、仙台育英の選手は夏春連覇に向けてさらにたくましさを増したことだろう。

 会見が終わろうとする寸前、須江監督はつけ加えるように自らこう切り出した。

「WBCのおかげです。ふだんはしないんですけど、バスのなかでWBCの試合を見て『うぉ〜!』となって試合に入れたので」

 この日の試合前、WBC準決勝で侍ジャパンはメキシコとの死闘の末に、逆転サヨナラ勝ちをしていた。

 ただし、この言葉は須江監督のメディアに向けたリップサービスだったのではないかと思えてならない。なぜなら、仙台育英の選手たちはWBCの狂熱に頼らなくても、全国の頂を登るための準備を整えてきたからだ。

 3月28日にはベスト8進出をかけて、龍谷大平安(京都)と戦う。仙台育英の夏春連覇まで、あと4勝。彼らは一歩一歩、険しい階段を上がっていく。

『離島熱球スタジアム』 鹿児島県立大島高校の奇跡

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プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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