能代松陽の長身右腕はもっと騒がれるべきレベル 大阪桐蔭戦のピッチングで全国区を目指す

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 選抜高校野球大会(センバツ)もベスト8進出チームが決まりつつあり、終盤戦へと突入している。優勝候補筆頭の大阪桐蔭は3月28日、能代松陽(秋田)との3回戦を戦う。

 だが、「能代松陽」と聞いて、センバツ初戦の戦いぶりを思い出せる野球ファンはほとんどいないのではないだろうか?

 というのも、能代松陽が石橋(栃木)とのセンバツ初戦を3対0で制した3月21日は、日本時間8時からWBC準決勝・日本対メキシコの試合が行なわれていた。多くの野球ファンは侍ジャパンの激闘に目を奪われ、能代松陽が甲子園でどんな戦いをしたのか把握していないと思われる。

優勝候補の大阪桐蔭に挑む能代松陽の森岡大智優勝候補の大阪桐蔭に挑む能代松陽の森岡大智この記事に関連する写真を見る

【被安打2、奪三振12の完封劇】

 侍ジャパンの衝撃に比べれば当然インパクトは弱いものの、能代松陽のエース・森岡大智の投球はもっと騒がれていいレベルだった。

 森岡は身長184センチ、体重81キロというマウンド映えする体格の右投手。9回を投げて許したランナーは内野安打の2人だけ。無四球で12三振を奪い、見事な完封勝利を挙げた。21世紀枠で出場した石橋が守備力を武器にするスタイルだった点を差し引いても、鮮烈な投球だった。

 森岡は2年生だった昨夏の甲子園でもマウンドに上がっている。だが、当時の記憶は苦々しいものだったと本人は明かす。

「球の勢いも変化球のキレも足りなくて、甘く入ったボールは全部ヒットにされてしまいました」

 聖望学園(埼玉)との初戦、0対3の5回裏からリリーフして4回を投げ、8安打を浴びて5失点。全国レベルの洗礼を受けたのだった。

 この冬場、森岡はレベルアップのためにフォーム改造に着手している。テーマは「抜けないボール」の習得だった。指にかかったストレートを目指すため、最適な腕の振りの角度を探した。その結果、下がりがちだった右ヒジを振る位置が高くなり、ボールに角度が出てきた。捕手の柴田大翔はその成果をこう語る。

「今まで抜けることが多かったボールの回転がよくなって、キレも強さも増しました」

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る