元ヤクルト近藤一樹がプロ入りを目指す教え子・近藤壱来をあえて放置した理由 (4ページ目)

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

壱来 近藤コーチからNPBの話はいろいろ聞いているんですけど、自分の目で見たことがないので。それは入らないと見られないじゃないですか。近藤コーチからは石川雅規さんのことも聞きましたし、金子千尋さんのすごいボールの話も聞きました。なにより、僕は高校時代に甲子園に行けなかったので、満員の球場で投げたことがない。

一樹 オレはそのことを言いたかったんだよ(笑)。

壱来 満員の球場は本当に揺れて、野手からの声も聞こえないとか。最高でも3千人のお客さんの前で投げたくらいなので、何万人の歓声というのはどんなんだろうって。選手の技術も、石川さんは何十年もNPBの世界でやられて、どんなキャッチボールをするのだろうとか......一度は見てみたいですし、受けてみたいです。

一樹 脅しじゃないけど、昨日の試合の状態では、NPBではとても厳しい(笑)。たとえば超満員の球場で、ホームとビジターに分かれるけど、負け投手になるとみんな敵になるからね。

壱来 球場のみんなが敵になるんですか?

一樹 全国にはほかにもファンがいるから。放送で見ています、ネットで見ていますと。オレは常に試合でやらかしていたから、球場では「金返せ!」とヤジられたし。今のイチはイライラどころか、NPBでやっていけないかもしれない。でもその分、活躍すると本当にいい生活ができる。そのひと握りのところをみんなが目指すわけで、そこに行きつくまでに苦労しておけば、上に行けた時に少しはラクになる。

壱来 そこに近づけるように、これからもとことん練習します。

一樹 勝つというのは難しいことで、苦労して苦労して勝ったほうが喜びは大きい。今年、こうして苦労していることが、最後に結果として出る。ドラフトにかかるかもしれないし、今年も指名されないかもしれない。でも、こうして今も苦労しているからこそ、また次のタイミングで入りやすくなるかもしれない。NPBは本当に大きな世界なんだよ。

おわり

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る