大島高校「奇跡のチーム」はいかに誕生したか。島外の強豪校志望のエースは仲間の言葉に悩みが消えた (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 守備陣の拙守もあり、大島は試合序盤から明秀学園日立に大量失点を許す。5回以降は無失点と粘ったものの、0対8の完敗で甲子園は幕を下ろした。

 あらためて甲子園を振り返って、西田は「行けてよかったという思いは、正直言ってあまりないんです」と打ち明ける。

「思いどおりの力が出なくて、悔いが残りました。みんなも同じだと思いますけど、このままじゃ終われません。甲子園での悔いは甲子園でしか晴らせないので、夏も絶対に行きたいんです」

 すでに腰の故障は完治し、万全の構えを整えている。バッテリーを組む大野もまた、思いは同じだ。

「夏はてっぺんをとることだけを考えています。とはいえ、そこを見すぎると足元をすくわれるので、目の前の相手を倒すことに集中していきます。どんな状況になっても、冷静さを失わない。センバツの経験を生かしたいと思います」

 進路を「プロ一本」に絞る大野に対し、西田は島外の4年制大学に進学する予定だ。

「もう稼頭央と一緒にバッテリーを組めないと思うと、寂しさはありますね」

 しんみりとそう言った西田は、気をとり直すようにこう続けた。

「稼頭央のボールの質はよくなってきていますよ。シュート回転があまりせずに、きれいな回転のストレートがくるようになりましたから。右打者のアウトコース、左打者のインコースにいいボールが決まるようになってきたので、楽しみです」

 7月2日に鹿児島大会初戦を迎えた大島は、薩南工に10対1で勝利。2回戦への進出を決めている。

 大島の夏が続けば続くほど、大野・西田バッテリーの物語も続いていく。

(おわり)

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る