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大学時代は栗林良吏から豪快弾。身長170センチの「和製アルトゥーベ」平良竜哉はフルスイングでプロへの道を切り拓く (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 だが、今や日本代表のクローザーから放った自慢したくなるような一発も、平良はよく覚えていないという。

「いろんな人から『栗林さんからホームラン打ったんだよなぁ』って言われるんですけど、言われて初めて『そういえば......』って思い出すんです。昔のことはすぐ忘れてしまうので」

 平良と接した同僚、指導者、メディアの大半は、その独特な感性に驚かされる。大学時に足が速くなった理由を聞くと、平良はこう語った。

「卵と豆腐を毎日食べたら体が強くなって、足が速くなったんです」

 そして、平良はいい豆腐の見分け方について力説するのだった。冗談ではなく、本気でそう考えているのだ。たんぱく質の摂取と筋力トレーニングの結果、足が速くなったと平良は伝えたかったのだろう。

 大学4年時にはプロ志望届を提出した一方、3位以内の指名でなければ社会人に進む「順位縛り」があった。結果的に指名はなかったが、平良はすぐに前を向いた。

「(3位縛りは)自分で決めたことですし、僕の今の実力では絶対にプロで結果を残せないということだと受け止めました。指名がなくて悔しかったですが、後悔は何ひとつありません」

負けられない戦いで殊勲の一打

 レベルアップを誓って進んだ社会人野球の世界。だが、平良はいきなりつまずいた。まず面食らったのは、社会人野球の細かさだ。

「本当にビックリしますよ。セカンドを守っていると、『こんなにやる?』って思うくらいフォーメーションのサインが多いんです。最初は『わけわかんない』って戸惑うばかりでした」

 3月には守備中に左肩を脱臼し、手術するアクシデントに見舞われた。5カ月に及ぶ長いリハビリが明けて間もなく、初めての都市対抗予選がやってきた。

 社会人最大の祭典・都市対抗。東京ドームでの本戦よりも、予選のほうが過酷と言われる。平良は今までにない緊迫感を味わっていた。

「NTT西日本は日本一を目指しているチームですし、会社にとっては都市対抗に出て当たり前。最低でもベスト8という雰囲気があります。1球1球に集中力を使いますし、経験したことのない試合ばかりでした」

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