大学時代は栗林良吏から豪快弾。身長170センチの「和製アルトゥーベ」平良竜哉はフルスイングでプロへの道を切り拓く (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 指導者からのアドバイスに振り回され、自分の打撃を見失う選手はプロ・アマ問わず多い。だが、平良は「合わない」と思えば、スパッと捨てる潔さがある。この取捨選択できる力、切り換える力こそ、フルスイング以上の武器なのかもしれない。NTT西日本の河本泰浩監督は、平良についてこう語る。

「本当にマイペースな性格で、時には厳しい指摘をすることもあるのですが、翌日には普段通りプレーしている。いい意味で引きずらず、萎縮せずにプレーできるのは彼のいいところでしょうね」

未来の自分は想像できない

 今年はプロ解禁の年になる。「5年後、10年後の自分の姿をイメージできますか?」と尋ねると、平良は少し困った顔をしてこんな本音を漏らした。

「まったくわからないんです。プロに行ってる自分も、社会人でプレーし続ける自分も。プロに行けたとしても、その世界に入ってみないとわからないこともあるはずなので。社会人でやり続けたとしても、野球への考え方が変わるかもしれません。とにかく目の前のことを懸命にやっているので、未来の自分がまったく想像できないんです」

 そう語りながらも、平良は自分に眠る可能性を信じている。毎週、体成分分析装置のインボディで自分の筋量や体脂肪率を測っている。

「まだまだ体は成長できると思っています。MAXの半分もいっていない感覚で、体のキレはもっとつくれるなと。自分に合う体重や質をつくっていきたいです」

 体のキレがいいと感じる時の筋量や体脂肪率を測って、バロメーターにしているという。栄養学も勉強し、今は「豆腐を食べすぎるのもよくない」と考えがあらたまった。

「本能に科学が加わった感じですね」と感想を伝えると、平良は人懐っこい顔で笑い、こう答えた。

「考えることは苦手なんですけど、数値化されるとわかりやすいので。でも、練習では考えても、試合では考えないようにしています。考えちゃうと集中できないので。体全体を使って打つスタイルは、まったく変わりません」

 最後にもう一度言おう。和製アルトゥーベの無心のスイングは、NTT西日本の社員やNPBのスカウトだけでなく、多くの人々の心を打つエネルギーを秘めている。

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