阪神ドラ1・森木大智「消えた天才だけにはなりたくなかった」。高校入学時から苦悩と挫折を重ねた3年間 (4ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by Terashita Tomonori

 とはいえ、彼に光が差す状況はなかなか生まれなかった。コロナ禍で2年夏の甲子園はなくなり、県独自大会は最上級生のみが出場。2年秋は県準優勝で地元開催の四国大会に進むも、初戦で高松商(香川)に完敗。残る甲子園のチャンスは「最後の夏」のみとなった。

「2年秋は151キロを出すなどフォームは充実していたんですが、自分で自分をしばっている感じでした。そして高松商に負けて心がぐちゃぐちゃになっていました。たしかその時期に僕は『中心軸を取りにいく』という言葉をしきりに使っていると思うんですけど、じつは身体の中心軸以上に『心の中心軸』が喉から手が出るほどほしかったんです。言葉に出し続ければ、手に入れられると思っていました」

 苦しかった2019年からの1年余り。そんな日々を超え、2021年、森木大智はついに「中心軸」をつかみ始める。

【"あわてず、あせらず、あきらめず"そして「勝つために」】

 きっかけは元旦だった。森木の携帯電話に「丁寧に会話して、野球の基礎を思い出させてくれた」というある人物からこんなメールが入る。

"あわてず あせらず あきらめず"

「ありがたかったです。この言葉は何度も頭のなかをループして支えになりました」(森木)

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