スカウトが密かに推すドラフトの「隠し玉」4人。大谷翔平級のスライダーを投げる投手も

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 インターネットが普及し、さまざまな情報が飛び交う世の中になった。野球の世界もリアルタイムでの情報はもちろん、こんなにもいるのかと思うほど「ドラフト候補」で溢れている。

 そのためドラフトの「隠し玉」を探すのは難しくなり、とくにプロを希望する高校生・大学生は「志望届」を提出しなければならず、どんな無名の選手でも世に知れることになる。そのため、かつてのように「アッ!」と驚くような指名はなくなった。

 そこで今回、優れた実力があるのにまだホントのところが伝わっていない選手を「隠し玉」として紹介したい。

 まずは高校生。なかでも3年生は、見ているこっちが「うまいなぁ」と思わず口に出してしまうほどのプレーが次々に飛び出し、高校生なりの完成度を感じる場面が何度もある。

 その一方で、失敗しないようにうまくやろうとする守りの意識が伝わってくる選手もいる。それだけに最後の夏に勝負をかけているような、強烈なパッションを発散している3年生は自然と目に飛び込んでくる。

強肩強打の遊撃手、国士舘高校の清水武蔵強肩強打の遊撃手、国士舘高校の清水武蔵この記事に関連する写真を見る 今夏の西東京大会で、試合前のシートノックから野太い声でチームメイトを鼓舞しながら、ノックの打球に勢いよく反応する動物的な"狂気"を漂わせていた選手がいた。

 国士舘高校の遊撃手・清水武蔵(右投右打)だ。捕りさえすれば、まずアウト。一塁手のミットを突き抜けそうなほどの強烈な送球は、すでに高校生の領域を超えている。

 清水を初めて見たのは、彼の1年秋。当時はセンターを守っていて、バックサード、バックホームの軌道がいつでもカットできる高さ......なんてものじゃない。腰の高さでグングン伸びて、捕球する選手が捕り損ねるほど。

 その後、センターからサードにコンバートされ、今年の春は捕手として都大会に出場し、最後の夏がショート。肩が強くて、足も速くて、どこでもこなせるセンスの持ち主。それ以上にすばらしいのが野球への情熱だ。

「清水の野球に対する向き合い方はチームのなかでも飛び抜けていて、目立ちすぎるほど(笑)。1日でも早く、高いレベルの環境で野球をやらせたい選手です」

 選手評はたいてい辛口の永田昌弘監督が感心したように話す。

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