スカウトが密かに推すドラフトの「隠し玉」4人。大谷翔平級のスライダーを投げる投手も (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 鹿児島の中学を出て、「オレは野球で生きていくんだ」という志を胸に国士舘高校にやって来た。それだけにうまくなりたいという欲求は異常なほどと、永田監督は笑う。

 観戦した試合で、清水は左中間に2本のホームランを放った。

「このチームを指導して25年ぐらいになるけど、バッターならナンバーワンじゃないかなぁ......」

 リストの強さとスイングスピードの速さは間違いなくプロ仕様。「打たなきゃ!」「打ってやる!」といった気迫がやや空回りして、上体が突っ込んでしまうこともあったが、全国でもトップクラスの潜在能力と向上心は、これからの成長を間違いなくあと押ししてくれるだろう。

 神奈川では、平塚学園の強肩捕手が評判だと聞いて見に行った。安達斗希はキャッチャーながらしなやかな腕の振りからきれいにバックスピンがかかった送球は、たしかに一級品に見えた。だが、それ以上に小さな体からダイナミックなプレーをする同じチームの背番号18の姿に目を奪われた。

 身長169センチ、体重65キロの阿部和広(右投両打)はセンターを守っていて、この日はリードオフマンを務めた。

 初球、もしくはファーストストライクから「パチン!」と対応して、鋭いライナー性の打球が外野を襲う。内野安打ほしさに合わせていくようなスイングではなく、フィニッシュでバットが背中を叩かんばかりの渾身のフルスイング。

 そしてスイングしてから走り出すまでの敏捷性、大きなストライドでグイグイ地面を蹴っていく強靭なバネは、迫力十分。試合を見たこの日は5打席すべて出塁して、三塁打を含む4安打。とにかくグラウンドをところ狭しと駆け回る姿が印象的だった。

「あんなに一生懸命で前向きな選手はいない。タイプとしてウチは指名しにくいけど、どこかの球団に獲ってくれませんかとお願いしたいぐらいです」

 そう語るスカウトもいる。

 たしかにプレーを見てしまったら、そう思うのも無理はない。見るからに応援したくなるような、心身のパワーにあふれた選手だ。

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