スカウトが密かに推すドラフトの「隠し玉」4人。大谷翔平級のスライダーを投げる投手も (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この春のリーグ戦で155キロをマークして、リーグ新記録となる1試合19奪三振というド派手な記録を出したものだから、一躍その存在を知ることになったが、まだ全国の舞台で投げたことがないし、実際にピッチングを見た人も少ないはずだから、「隠し玉」という扱いでもいいだろう。

 青森大・長谷川稜佑(右投右打)については、とにかく速いと聞いていたが、ピッチングを間近で見た時の第一印象は「いいスライダーを投げるなぁ」だった。

 大谷翔平(エンゼルス)が花巻東高校時代に投げていたスライダーは、真っすぐと思った瞬間に真横に吹っ飛んでいくようなえげつない変化だったが、長谷川もそれに近い。

 右打者のアウトコースを狙うと、曲がりすぎてなかなかストライクにならないと嘆き、今は体のほうから曲げてストライクゾーンに決める軌道を勉強中だという。

 先輩に好投手が何人かいたので、3年間じっくり下地をつくり、足立学園(東京)時代に145キロをマークした「剛腕」の素質が、開花の兆しを見せてきた。

「性格的にもリリーフのほうがいいテンションでマウンドに上がれます」(長谷川)

 あとは、3球で打者を追い込める精度の高さを身につけられるかどうかだ。そうすれば、試合終盤の1イニングを力でねじ伏せられるパワー系ピッチャーを求めるチームからの指名があるはずだ。

 社会人の野手なら、NTT西日本の藤井健平(左投左打)も密かに注目している選手だ。大阪桐蔭→東海大→NTT西日本と名門で育ち、ルーキーイヤーだった昨年の都市対抗から堂々としたプレーを披露。

 こういう選手は、ひっそりとプロ入りしたあとに大活躍して、「プレーはずっと見てきたのに......」とスカウトを悔しがらせるタイプである。

 昨年のドラフトで阪神が6位で指名した中野拓夢(三菱自動車岡崎)や、2016年のDeNA9位・佐野恵太(明治大)がその典型だろう。

 藤井のスピード溢れる走塁と、フェンス際の見事な捕球技術、さらに東海大時代から光っていた強肩は、今すぐプロに混じってもトップクラス。その日によって調子の波があったバッティングも、社会人に入ってから安定感が増し、飛距離、打球のスピードとも劇的にアップした。

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