「ベースボールゲームトラッカー」ってなに?「効果てきめん」で普通の公立校が大躍進、祇園北を決勝に導いた (2ページ目)
「自分たちの分析にすごく生きました。うちのキャッチャーは『このカウントならこの球種を要求している』とクセがわかり、ピッチャーについては『意外とこの球種のストライク率が高いから、このカウントで使おう』と、映像とデータを見ながら客観的に戦略を立てていくことができました」
そう語ったのは、今年4月に赴任した篠原凡副部長だ。大学時代から高島氏に指導を受けていた縁で、ベースボールゲームトラッカーの導入を提案。同い年の藤本伸也監督もこれに賛同した。
ただ本格導入するにあたり、ネックとなったのが資金面だ。それについては、3年前まで野球部の顧問を務め、現在は科学研究部を担当する西武宏先生が動いてくれた。普通科理数コースで主任を務める西先生が、科学技術の振興と青少年の健全育成に取り組むマツダ財団の助成に応募し、5月下旬、支援を受けられることが決まった。
実際、使用してみると想定外の効果があったと、藤本監督は振り返る。
「部内戦で出たデータをもとに練習し、次の週の部内戦に臨む。そうしたサイクルで生徒自身がよく考えてやってくれました。パワプロ(実況パワフルプロ野球)みたいに『A、B、C』と能力値が出るのが楽しいみたいです」
祇園北は野球の実力的には"普通"だが、学力的には広島県の進学指導重点校に指定されている。じつは今夏の躍進には、そうした土壌も関係がある。
「これはすごい!」
2年前に野球部で学生アナリストを務めた大学生がボランティアに来ると、驚きの声をあげた。以前は手作業で行なっており、データを整理するだけで膨大な時間を取られたが、ベースボールゲームトラッカーでは入力翌日に各項目がデータ化される。コロナ禍で対外試合をできなかった6月、祇園北は紅白戦を繰り返してデータを集め、各選手の特徴を明らかにした。
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