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「ベースボールゲームトラッカー」ってなに?「効果てきめん」で普通の公立校が大躍進、祇園北を決勝に導いた (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports

 ともすればデータは採取しただけで満足してしまいがちだが、いかに現場に落とし込むかが肝になる。篠原副部長は普段から高島氏のオンラインサロンで学んでおり、データとパフォーマンスアップを融合できたのが大きかったと語る。

「よく『ピッチャーは困ったら低めに投げろ』と言われますが、低めに投げるのが不得意な子もいます。逆に右投手が右打者に対してストライクを取りやすく、強いボールを投げられるのは内角高め。そうやって口で言うだけでなく、データが出ているとピッチャーは自信を持って投げ始めます。コロナの活動自粛期間が明けて対外試合で試したら、効果てきめんでした」

 日本の野球界では伝統的に「配球の基本は外角低め」とされ、そう命じる指導者も少なくない。だが身体動作的に考えると、右投手が右打者の外角低めに投げるのは、股関節が柔らかくないと難しい。技術的に外角低めに投げられず、中に甘く入ったり、力が伝わらずに弱い球になったりすると、打者にとって"チャンスボール"になる。

 対して、祇園北がこの夏に快進撃を見せた裏には、固定観念にとらわれない配球があった。篠原副部長が振り返る。

「データを見ると、意外と高めの球が打たれていませんでした。高めには強い球がいっているからだと思います。高めの球を使いながら、どのカウントで変化球を投げるか。コロナで時間ができたからこそ、バッテリーと話しながら自分たちの分析に特化できました」

 この夏に主に登板した、エースの山本優貴、同じく3年生の青木翔吾、2年生左腕の岡森壮汰ともに平均球速は120キロ代前半から中盤だ。それでも2回戦でシード校の山陽を破り、3回戦では打力の高い武田を下し、勢いに乗って決勝まで進んだ。とりわけ山本が決勝まで19イニング連続無失点の好投を見せた背景にあったのが、"シュートホップ"するストレートだった。

 ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)やジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)が武器とするように、シュート成分とホップ成分が多いフォーシームは打たれにくいとメジャーリーグでは言われている。

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