2021.09.09

走攻守の三拍子よりも和製大砲候補。「打てるだけの選手」でもスカウトが興味津々のワケ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Okazawa Katsuro

 今年夏の甲子園で、あるスカウトがこんなことを口にした。

「盛岡大付はもう一回見ます。それと、智辯学園の前川(右京)も......」

 気になる選手がいたり、お目当ての選手が初戦で出場しなかったりすると、甲子園に残って視察を続けるスカウトがいるが、通常は各チーム1試合ずつ見て、ひと回りすると甲子園を去っていくものだ。

今年夏の甲子園で打率.455、2本塁打の活躍を見せた智辯学園の前川右京今年夏の甲子園で打率.455、2本塁打の活躍を見せた智辯学園の前川右京 この記事に関連する写真を見る  このスカウトの言葉を聞いた時、すぐに彼らの目的がわかった。キーワードは"和製大砲"。長打力のある選手の発掘である。

「少し前なら、いくらバッティングが優れていても、守れない、走れない選手は"一発屋"のひと言で片づけられていたのですが、近年はそういった選手もしっかり見ようと。打つだけの選手の見方が変わってきました」

 その背景には、山川穂高(西武)、岡本和真(巨人)、佐野恵太(DeNA)、村上宗隆(ヤクルト)らの活躍や、牧秀悟(DeNA)、林晃汰(広島)の台頭も見逃せない。

 アマチュア時代の彼らの評価は、非凡な打撃センスは認められていたが、「打つだけで走れない」「守るポジションがない......」とチームによって大きく分かれていた。だが、プロ入り後の彼らは持ち前の打撃力を発揮し、長距離砲としてチームに欠かせない存在となっている。前出のスカウトが言う。

「ホームランとか、長打力とか、プロ野球の華ってわかっていながら、"三拍子"揃った選手ばかり集めてきた結果、打線が小粒になり、迫力がなくなってきた印象があります。『このメンバーじゃ、ホームランなんて期待できないよ』ってチームがいくつもあります。これだと、高い金を払って試合を見に行こうとは思わないですよね」

 ペナントレースも残り30〜40試合になったが、いまだホームラン数が50本台のチームが2つもある。ホーム球場の大きさも少なからず関与しているが、それでもホームランを打てる選手が少ないというのは寂しい限りである。

 以前は、「この選手のホームランを見に行こう」と思わせてくれる選手が何人かいた。不動のレギュラーではなくても、ファンに人気のある選手となって、少なからず"集客"にも貢献していた。