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あいつよりもいいチームをつくりたい。
激戦地・東京でしのぎを削る双子監督 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 現在も足立西で「ファーム芝」を展開し、野菜や植物を育てている。英晃監督は「生命に対する接し方が変わった」と語る。

「野菜も人も、丁寧につくれば育ちます。ゴーヤなんかも『育てるのは難しいよ』と言われたんですけど、手をかければいくらでも実りますから。でも、毎日肥料をやっても、根っこを焼かれてしまうこともあります。生徒も一緒で、何でもかんでも言ってしまうとよくない。だから我慢強くなりましたね」

 今夏は3回戦でシード校の日本ウェルネスに6対1で勝利したが、その瞬間を英晃監督は見ていない。試合中盤に不整脈を発症したため、ダッグアウト裏で休んでいたからだ。

「監督が寝ている間に勝っている。それって理想的だと思うんですよ。ベンチ裏で休んでたら、選手がいちいち報告にくるんです。『先生、タイムリーを打ちました!』『ピンチを抑えました!』って。本当にのびのびやってるのが伝わってくるんですけど、『興奮しちゃうから好きにやってくれ』と言いましたよ」

 そして、英晃監督は「無観客試合じゃなくて、無監督試合ですね」とオチをつけた。プロセスは違っても、最終的に指導者不在でも戦える野球という意味では、ゴールはふたりとも共通している。

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 昨春の都大会では雪谷と足立西が対戦し、芝兄弟の直接対決が実現した。4月1日に組まれたため、浩晃監督は「エイプリルフールのウソのような試合でした」と笑い、こう続けた。

「大会前の練習試合では2試合ともウチが負けていたので、負けられない。やばいなと思っていました。やっぱり兄弟だからこそ、負けたら格好悪いという思いがありますから」

 試合は3対1で雪谷が雪辱を晴らしている。

 ともに甲子園を目指している。だが、英晃監督は兄弟で存分に戦える親戚カップも大きなモチベーションになっていると明かした。

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