あいつよりもいいチームをつくりたい。
激戦地・東京でしのぎを削る双子監督 (3ページ目)
雪谷ナインと足立西ナインの集合写真 縁が縁を呼べば、なんでも不思議に思えてしまうものだ。なにはともあれ「24」と「48」のカップ戦ということで、「248親戚カップ」を正式名称とする交流戦は始まった。東京都の教員経験があり、現在は千葉県の白井高校を指導する櫻井剛監督に同校の広大な野球場を借りて、3チームの変則ダブルヘッダーを組んでいた。
だが、今年の春に西監督が異動のため小岩を離れた。強豪校をも苦しめるほど力をつけていただけに西監督の無念も大きかったが、異動先はなんと雪谷だった。
雪谷にはほかにも現役時代に阪神、日本ハムなどで投手として活躍し、前任の江戸川でも浩晃監督とタッグを組んだ伊達昌司助監督も指導スタッフに加わっている。浩晃監督は言う。
「有能な方に囲まれてありがたいですし、幸せ者です。周りからは『なんでいい指導者を集めてんだ?』とからかわれます。ふたりとも実績があるのに、私に配慮してやってくださって、本当にありがたいです」
双子とは言っても、指導者としてのスタンスは微妙に異なる。浩晃監督が率いる雪谷は「ノーサイン野球」を標榜し、選手が自立して考えて試合を優位に進めることを目指している。
そんな浩晃監督は、足立西を率いる英晃監督の指導をこう見ている。
「こだわりを持って、選手たちに徹底させる力はすごいですね。極端に言えば、こちらが短時間でどれだけうまくなるか追求するのに対して、向こうは時間をかけてこだわっていることを習得させている感じです」
英晃監督について語るうえで避けては通れないのは、もはや趣味の域を超えて農作業にのめり込んでいることだ。きっかけは母校の江戸川に赴任し、定時制の教員を務めていた15年前にさかのぼる。
「生徒に高齢のおじいさんがいて、ひょうたんをつくっていると言うんです。僕もきゅうりとか夏野菜をつくってみたいんですよね、と相談したら、いい肥料のこととか教えてくれて。それからですね」
校舎内で野菜を育て、収穫する。時には生徒から「今夜のおかずに白菜をください」とねだられ、コミュニケーションのきっかけになった。英晃監督がつくった農園は「ファーム芝」と呼ばれた。
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