練習時間1日50分。進学校の152キロ右腕が広島の歴史を塗り替える (5ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 現在、谷岡が習得に取り組んでいるのが、"スラッター"と呼ばれる変化球。スライダーとカットボールの中間のような変化を見せる球種だ。谷岡が続ける。

「スラッターのリリースが、『アメフトボール投げ』と同じなんです。アメフトボールにジャイロ回転をかけるイメージで野球ボールを投げるとスラッターになる。アメフトボールを投げることで、リリースの感覚と手首の角度を上手く調整することができるんですが、スラッターを試合で投げたとき、それと同じ効果があると感じています。なので、夏もスラッターのあとに投げるストレートで最速を更新できるんじゃないか、と思っています」

 最後の夏を前に、岡嵜はこう期待を寄せる。

「谷岡は決して器用ではありません。できないことも多い選手です。けれども、『これをやってみよう』とこちらが指示をしたことは、手を抜かずに最後までやり遂げる。コーチやトレーナーから、野球の技術、体の構造、栄養についての知識を貪欲に吸収しようと食らいついていく。その姿勢でここまで目標をクリアしてきているので、最後まで貫いて『甲子園に行って、高卒でプロ入り』という高校での最大の目標を達成してほしいですね」

 夏の初戦は7月17日、神辺と広島中等教育の勝者との対戦が決定した。球場はスピードガンが設置されている鶴岡一人記念球場(呉二河球場)。「広島大会初の150キロ」の期待もかかる一戦となる。

 驚異的な成長スピードと無限の可能性。この夏、努力で周囲の予想を飛び越えてきた右腕が広島の歴史を塗り替える。

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