練習時間1日50分。進学校の152キロ右腕が広島の歴史を塗り替える (4ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 脱力を意識したフォームの習得に取り組むだけでなく、スパイクの中敷きを左右で別のものにするなど、多方面から改善を試みた。さらに、インステップ修正は思わぬ副産物をもたらした。谷岡が続ける。

「脱力を意識するために、『130キロを投げる力感で140キロを出す』イメージで投げていて。その感触が思っていたよりも自分に合っていたんです」

 130キロの力感で140キロ、140キロの力感で150キロを投げる。その意識で臨んだ5月初旬の練習試合で140キロ後半の球速を記録。故障からの完全復活を印象づけただけでなく、6月8日の近大付との練習試合で自己最速を更新する152キロを記録した。
 
 148キロを叩き出した2年時に、岡嵜と定めた目標がある。それが「公式戦での150キロ超え」と「最速155キロ到達」。目標の意図について岡嵜が説明する。

「広島県内の公式戦で、球場のスピードガンで150キロを超えた投手はいないと聞いています。有原航平投手(現・日本ハム)が広陵時代に甲子園で149キロ、広島新庄の堀瑞輝投手(現・日本ハム)は3年秋の国体で150キロを出していますが、広島大会で150キロは出していない。谷岡には『広島大会初の150キロ投手になろう』と話しています」

 もうひとつの「最速155キロ」は、「150が目標では、そこに届かずに終わってしまう」と"あえて"設定した高い目標だった。しかし150キロを超えた今、その数字は現実味を帯びつつあり、谷岡も手応えを口にする。

「152を出したときも、脱力を意識しながら149、151を投げた流れでの更新でした。かなり感覚が掴めてきましたし、狙わなくてもスピードが出させるようになってきたと感じています。それと、新しい変化球を練習中なんですが、その新球がストレートにもいい影響を与えてくれていると思います」

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