「悲劇の右腕」の教え。木更津総合に好投手が生まれ続ける謎が解けた (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そして、多くの野球ファンにとって、この痛々しい姿が千葉に対する最後の記憶になっている。高校3年時はほとんどの時間をリハビリに費やし、その後も千葉が華やかな舞台で躍動するようなニュースは届いていない。

 そんな千葉が、実は木更津総合の投手育成に貢献していたとは......。実際に木更津総合の五島監督に聞いてみても、「千葉は今でも毎年冬の合宿に来て、選手にいろいろと教えてくれていますよ。とても勉強していますし、信頼しています」という答えが返ってきた。

 千葉に会ってみたい――。そんな思いを募らせ、千葉が現在所属する桐蔭横浜大を訪ねてみた。

「去年の4月に右ヒジを手術して、今は8割くらいの力で腕を振れるようになってきました。春のリーグは間に合いませんでしたが、確実に少しずつよくなっています」

 今年で大学4年。大学野球8季のうち、すでに7季は終わっているというのに、千葉はいまだ公式戦マウンドに立つことができずにいる。本人は前向きに語ってくれたものの、やはり故障の根は深いと思わざるを得ない。

「桐蔭横浜の野球は接戦に強いという特徴があるんですけど、春のリーグ戦は大事なところでミスが出て競り負けて、目指す野球ができませんでした」

 眼前に広がる大学の練習風景を眺めながら、千葉はチームリーダーのような広い視野から春の戦いを総括した。それもそのはずで、千葉はリーグ戦出場のない投手ながら、なんと桐蔭横浜大の主将を務めているのだ。

 桐蔭横浜大の齊藤博久監督は言う。

「本来であれば、千葉のような力のある投手は歴史のある名門大学が放っておきません。私は投げられないことを覚悟の上で声をかけました。実際、ここまではリーグ戦で投げられていませんが、キャプテンとして十分な働きをしてくれています。どうして千葉をキャプテンにしたかというと、彼には人を惹きつける人間力、カリスマ性があるから。千葉をキャプテンにしたからといって『なんで千葉が?』と思う人間は誰もいません」

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