「悲劇の右腕」の教え。木更津総合に好投手が生まれ続ける謎が解けた (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そんな千葉に、本題である「木更津総合の投手が育つ理由」について聞いていくことにした。

 そもそも、千葉が投球理論に興味を持ち始めたのは4歳上の兄の影響だったという。強豪高校の野球部にいた兄は、ことあるごとに野球の技術に関する情報を探してきては、千葉に授けた。中学時代には、こんなアドバイスがあったという。

「ピッチングには2つの動作がある。それは『並進運動』と『回転運動』。体重移動という並進運動でためた力を、最後に回転運動でボールに伝えるんだ。貴央のフォームは、並進運動の途中から回転運動が始まっているから、できるだけ横を向いた状態を長くできるといいね」

 兄の助言どおりに実践してみると、パフォーマンスは飛躍的に向上した。千葉はフォームに興味を持ち、さまざまな書籍を読み漁るようになる。

 参考になった本を尋ねると、千葉は少し困ったような顔をして、こう答えた。

「すり切れるまで読んだ本もあるんですけど、僕はピッチングと広い視野で向き合いたいと考えているんです。参考になる内容があっても、『こんな考え方があるんだな』と受け取って、『これが正解』とは思わないようにしています」

 中学生の時点で投手としての知識を蓄えた千葉は、数ある誘いの中から進学先として木更津総合を選ぶ。

「寮生活も学校生活も『自立』がテーマだと聞いてから練習を見学したのですが、『本当に高校生か?』と思うくらい一人ひとりが独立していて、少しのミスも許さないような緊張感がある。『ここでやりたい』と思いました」

 入学時、3年生には黄本創星(きもと・ちゃんそん)という県内指折りの好投手がいた。千葉は1年夏から登板機会を得て、夏の甲子園では春夏連覇を達成する大阪桐蔭戦でリリーフ登板し、貴重な経験を積んでいる。

 そして驚くべきは、千葉は下級生時から上級生にアドバイスを求められ、技術的な助言を送っていたことだ。その背景には、「いいものは上級生だろうと下級生だろうと学ぶ」という木更津総合の選手特有の気質があったことは間違いない。千葉が上級生になると、必然的に下級生から指導を請われることが増えた。

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