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神奈川屈指の快速左腕を育てた、
「豪華すぎる2人のコーチ」の正体 (3ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ある日、こんな出来事があった。

 あるプロ球団のスカウトが練習を見に来たとき、矢澤は「今日はマウンドに立つ予定がありませんので......」とピッチングをしなかった。プロのスカウトが来ると、「せっかく来ていただいたから」と、投げる予定がなくてもピッチングを披露するケースが多いという話を聞いたことがある。だが、矢澤は「今日は投げるべきではない」という判断をし、きっぱりと断りを入れた。これも堀田からの教えである「勝つために何をすべきか」を実践した結果だった。

 考え方だけではない。技術的な部分も堀田の指導で成長した。

「『(踏み出した)足をついてから投げなさい』とよく言われました。しっかり足をつけることで地面から反発力が得られ、それによってボールの質が違ってくるんです」

 堀田の指導に耳を傾ける矢澤の様子に、中丸監督は「アイツは本当に野球小僧ですね」と目を細める。

「ピッチングだけでなくバッティングもよくなりました。以前はどんなボールでも振り回していましたが、今は逆方向を意識することで体が開かなくなりました。その結果、バットコントロールもうまくなりました。いいバッターです」

 矢澤は今年6月終了時点で、高校通算27本塁打を記録している。3番を打ち、登板しない日はライトを守ってチームを支えている。

 今年3月、センバツ直前に東海大相模と練習試合が行なわれた。急遽決まった試合だったが、東海大相模には森下翔太など注目選手が多く、多くのスカウトやマスコミが東海大相模のグラウンドに集まった。

 試合は5-2で東海大相模が勝利し、矢澤は5回を投げ5失点だった。とはいえ、甲子園へ向けてコンディションが上がっている東海大相模を相手に3回まで無失点に抑え、4回の3失点はエラーが絡んでのものだった。結果的に5失点したが、矢澤は納得した表情を見せた。

「ゲームはある程度つくれたと思います。ただ、東海大相模のようなチームはチャンスでしっかり決めてきます。ピンチでこそ丁寧さを忘れず、思い切ったピッチングをしないと点を奪われてしまいますね」

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