2018.07.10

名門相撲部で鍛えた逸材。
「ダルビッシュ2世」が挑む最後の夏

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 投球練習前、埼玉栄の米倉貫太(かんた)は徐々に股を広げて地面にペタリと座った。左右にほぼ180度脚を開いたまま上体を前屈、左右に曲げて筋肉を伸ばしていく。優れた選手はさすがに違うなと見ていると、「最初はみんな硬い。だけど毎日続けることで、スポーツ選手にふさわしい柔軟性を身につけていきます」と若生(わこう)正廣監督が教えてくれた。米倉の近くにいた捕手も同じように開脚している。

プロ注目の右腕、埼玉栄のエース・米倉寛太 ダルビッシュ有(カブス)を筆頭に、のちにプロ野球選手となる多くの高校生を指導してきた若生監督が「過去に見た選手のなかでもトップレベルの素材」と成長を楽しみにしているのが米倉だ。

184cm、85kgという恵まれた体格から柔らかい腕の振りで、質の高い140キロ台のストレートとカーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップと次々と投げ込んでくる。体の使い方、体重移動が優れており、球の質をよくしている。3年春からはワインドアップモーションに変えて体を大きく使うようになり、威圧感も増した。

「足を上げてからの姿勢と体重移動は、入学したときから監督に言われ続けてきました。監督にすすめられたワインドアップもしっくりきます。投手として理にかなった動きだと思うので、これから細かい部分まで完成させたいです」

 そう話すと米倉は、ストレートに変化球を織り交ぜながら投球練習を続ける。投じた球は吸い寄せられるように低めへと向かっていった。

 米倉は福岡県うきは市の出身。御幸小学校3年の時に野球をはじめ、中学では浮羽(うきは)ボーイズに所属していた。ボーイズ時代は県ベスト4まで進み、県選抜メンバーに入ったこともある。若生監督と初めて会ったのは中学3年の春。若生監督が米倉の試合を見に行った。

「ひと目見て、いいピッチャーになるだろうなと。体の動き、腕のスイングのスムーズさ。肩甲骨の柔らかさ。そして大きい。ダルビッシュのようになれるかはわからないけれど、ダルビッシュと比べてもひけを取らない可能性を感じました」