【高校野球】最後の夏に懸ける全国の剛腕投手たち (3ページ目)
春の大阪府大会でも完投勝利を挙げるなど、試合を作れるようになってきたのだ。そのひとつの要因は、ボールのゾーンが低くなってきたことだ。145キロ前後のスピードがあっても、ベルト付近の高さにボールが集まり打ち込まれていたのが、これまでの永谷だったのだが、今はミットを外れても高めにはいかない。ここに来て、ようやく安定感を手にした。
ただ、初戦の相手は昨年の覇者・大阪桐蔭高。事実上の決勝戦と言われる大一番で永谷がどんなピッチングを見せるのか注目だ。
同じ関西でもうひとり注目を集めているのが、兵庫・三田松聖高の松本侑也(3年/184センチ82キロ/右投右打)だ。この剛腕も、昨年秋の段階ですでに140キロ後半をマークしていた。ただ、1足分ほどインステップして首を振りながら投げるため、コントロールに課題を残していた。素材は申し分ないだけに、この夏、どこまで制球力をつけているのか楽しみでならない。
九州には宮崎と大分に逸材がいる。ひとりは宮崎学園高の横山楓(3年/181センチ73キロ/右投両打)。ただこの投手、ネット裏から見ていると「なんでそのボールで空振りが取れるのか?」と思うぐらい、速さを感じない。それでも、落差の大きなカーブにフォークのようにスッと沈むチェンジアップを持っているのに、勝負球はほぼストレートなのだ。
その謎は見る位置を変えることによって解ける。驚いたことに、ダグアウトの上あたりから彼のピッチングを見ると、スピード感がまるで違う。ものすごく速いのだ。ネット裏から見た時と、横から見た時で体感スピードが違う投手は稀(まれ)にいるが、ここまで違う投手で覚えているのは、JR東日本東北時代の攝津正(現・ソフトバンク)以外に思い出せない。まさに実戦向きの投手だ。
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