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【自転車】TeamUKYOのエースが語る「今の若手に言いたいこと」 (4ページ目)

  • 西村章●構成・文・写真 text by Nishimura Akira

 では、そのためにはどうすればいいのかというと、自分自身を厳しい環境下に置いて鍛え、どんどん強い選手になって欧州を目指すしかないんです。辛いことを言うようだけれど、『ヨーロッパに行きたいと思わないのなら、銀行員を目指してください』と、むしろ僕は思う。何百万円も親にお金を出してもらって大学を卒業したのなら、日本で全然食えない名前だけのプロ選手をやっているよりも、ちゃんと就職をしたほうが親だってきっと安心しますよ。

 もちろん、お金がすべてではないけれど、どうせ戦うなら最高レベルでやっているところに行きたいと考えるのが当たり前だと思う。だから、自転車に乗る以上はヨーロッパでクラシックレースを走ってほしいし、やがてツール・ド・フランスを走れる可能性だってあるだろうから、ボロボロになるまで努力をして、そこを目指してほしいんです。

 これは本当に、心底そう思う。だからこそ、TeamUKYOの選手たちに限らず、今の若い選手たちに問いかけたいんですよ、『君は何を目的として、今、日本で走っているの?』って。僕も初めてヨーロッパに行ったときなんて、本当に辛いしイヤでしたよ。言葉は分からないし、実力は全然違うし、いじめられることだってある……。でも、走れるようになれば彼らは認めてくれるし、そこでようやくレースの面白さや難しさも分かるようになる。それこそ、グランツールなんて走ると、ものすごく苦しいレースだけど、だからこそ本当に楽しい。その喜びこそが、スポーツだと思うんですよ」

(次回に続く)

著者プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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