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投資教育を1年間受けた高校野球部生の人生は? 「株式投資か起業か就職か」 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【会社員になって学ぶとしたら...】

奥野「そういう意味では、絶対に起業家になるという情熱を持っている人も、最初は大きな会社に入ってがむしゃらに働いてみるのもいいと思うよ。社会とは、ビジネスとは、ということを最速で学ぶいい方法だと思うんだ。

 会社に入ったらどんな勉強ができるのか。たとえばどんな業種の企業でも、一定程度以上、大きい企業だと、経営企画部という部署があって、出世コースなどと言われている。当然、配属希望者が多いんだけど、もし将来、起業家になりたいと考えるなら、あまり勉強にならない部署だと言えるかもね。

 それは経営企画部なんかに配属されたりしたら、現場を見る機会がなくなってしまうから。それでは、ビジネスを一気通貫で理解することができない。だから僕は、どの業種で働くにしても、まずは辺境の支店・支社や子会社への配属を希望したほうがいいと思っているんだ。

 いきなり辺境の子会社に行けなんて言われたら、『飛ばされた』と思ってしまうかもしれないよね。でも子会社だと、入社間もない若い人でも、原材料を調達し、モノを作り、マーケティングをし、営業し、必要な人の採用も行ない、それらすべてにおいてリーダーシップを発揮することが求められる。会社の経営に必要なことをすべて、現場で学ぶことができるんだ。孤独にも耐えなければならないだろうし、どうすればこの戦いに勝てるかということも、すべて自分の頭で考えなければならない。

 こうした経験はめちゃくちゃ貴重で、やりきれるかどうかは、仕事に対する情熱がどのくらいあるのか次第だろうね。この経験を通じて学べることは、少なくとも起業を目指す人にとっては、海外のビジネススクールに入学してMBAを取得したり、弁護士資格や税理士資格、公認会計士資格を取得したりするよりも、はるかに意味があると思うんだ」

鈴木「でも、資格はないよりも、あるに越したことはないでしょ?」

奥野「そうだけど、僕が言いたいのは、資格取得が目的ではないということなんだ。資格取得はあくまでも手段にすぎない。

 現場でビジネスの流れを一気通貫で見るようになると、さまざまな実務をこなしていくなかで、『あ、この資格を持っていたほうが絶対にいい』というのが、自然に見えてくる。資格はそれから取っても全然遅くないはずだよ。むしろ何に使えるのかがわからない状態で、闇雲に資格だけを取っても、それを活かす方法がわからなければ、時間と費用がムダになるだけでしょう。

 日本だと、大学院に入る人は大学を卒業してそのまま進学するという人が大半のようだけど、海外の大学院で学んでいる人は、大学を卒業し、社会人として経験を積んだ後、『自分にはこれが足りない』『これを学べばもっとキャリアアップできるかもしれない』ということに気づいて、あらためて大学院で学び直すというケースが多いからね」

鈴木「辺境の子会社か......僕はやっぱり、普通にワークライフバランスを大切にして働きたいかな......」

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