投資教育を1年間受けた高校野球部生の人生は? 「株式投資か起業か就職か」 (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【会社員人生と起業家人生】

奥野「起業するのは本当に大変なことで、前回、前々回も触れたように、起業経験のある有名投資家のベン・ホロウィッツさんは『不眠との戦い』だし、『吐き気がする』ものだと、著書でも書いているんだけど、じゃあ、会社員を選んだらラクなのかというと、これもまた違うんだ。やはり起業できるくらいの情熱と主体性を持たなければ、会社員としてもおそらく、面白くない人生を送ることになってしまうと思うよ。鈴木君が言うような、ラクな道なんてひとつもないのかもしれない」

鈴木「でも先生、会社員を選んでも起業するのと同じくらいの情熱と主体性が必要なのだとしたら、会社員を選ぶのって損ですよね。だって、起業家よりも断然、収入が少なそうだし......」

奥野「鋭いところを突いてきたね。確かにそうなんだけど、起業家というのは『人並外れた情熱』が必要になる。ここが会社員に求められる情熱とは、少し違うところかもしれないね。

 誰もが仕事に対して情熱を持つ必要はあるんだけど、そのなかでも起業家になれる人は、人並み外れた情熱を持っているんだよ。

 だから、自分のビジネスプランを方々で熱く語り、大勢の賛同者を得て出資を募ったり、あるいは優秀な人材を集めたりできるんだ。他人を巻き込めるだけの、人並み外れた情熱を持っているかどうか。これが会社員人生と起業家人生の分かれ道になるんじゃないかな」

由紀「会社員から起業する人も結構いらっしゃいますよね」

奥野「たとえば『LIXILグループ』の代表執行役社長兼CEOの瀬戸欣哉さんは、もともと『住友商事』に入社した後、間接資材販売で100年近い歴史があるアメリカの『グレンジャー』という会社と合弁で、『住商グレンジャー(現『MonotaRO』)』を社内ベンチャーとして立ち上げた人なんだけど、『住友商事』と『グレンジャー』という大企業2社からお金を出させて、日本の間接資材販売の業界慣習に穴を開けた。それは凄まじい情熱がなければ到底できないことだと思うよ。

 起業ではないけれど、現在『サントリー』の社長を務めている新浪剛史さんも、『三菱商事』に入社した後、コンビニエンスストア『ローソン』のビジネスモデルを作って、実際に『ローソン』の社長を務めていたよね」

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